菅原氏の秘書がコロコロ変わるのは永田町で有名な話。その原因はパワーハラスメントで訴えられかねない言動にあるとされ、「辞めた秘書連中にいつか“刺される”」(政府関係者)と周囲はヒヤヒヤしていたのだ。

 実際、週刊誌はネタを温めていて、菅原氏の秘書へのパワーハラスメントと有権者を買収していたとの疑惑を報じた。懸念は現実のものとなった。

 経産相に就任した9月、関電の原発マネー還流問題が発覚し、電力行政を所管する大臣として菅原氏は冒頭の通り、厳しい姿勢で臨む方針を示していた。

 しかし、その翌月、菅原氏の公設秘書が地元の選挙区で香典を渡していた新たな疑惑を報じられ、10月25日に菅原氏は辞表を提出。事実上の更迭である。

 エネルギー業界、特に電力業界では菅原氏の経産相起用に当初から首をかしげていた。というのも、菅原氏はエネルギー政策に精通していないだけでなく、政府の基本方針とは正反対の「脱原発」を掲げていたからだ。

 9月の組閣時、大手電力会社関係者は「安倍政権の意図が分からない。やはり原発政策は停滞するのか」と肩を落とした。当の菅原氏は「脱原発を掲げても経済産業大臣になれた」と冗談めかして周囲に語っていたという。

 別の電力業界関係者は経産相人事について「もはやエネルギー政策は経産省ではなく、首相官邸マター。これからも官邸がグリップできる人物を経産省に送り込むだろう」と分析していた。

 その言葉通り、菅原氏の後任には、菅官房長官に近い梶山弘志元地方創生相が充てられたのだった。

梶山・新大臣が原発推進派でも業界はシビアな目

 東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故、そして自民党が旧民主党から政権を奪還して以降、エネルギー政策の主導権は所轄官庁である経産省から官邸にシフトした。

 特に原子力政策については経産省が踏み込めない「アンタッチャブル」(自民党関係者)なものになった。