そもそも、英語民間試験は現在も低所得世帯の負担になっている。

「今までも大変でした。経済的に余裕のないご家庭は、どこもそうだと思います。英検は、高校が受験を勧めていましたけれど、片道2時間かかる試験会場まで、バスや電車で行くわけです。その交通費だけでも大変で」(ミユキさん)

 子どもの障害など、親の付き添いを必要とする事情があれば、交通費は2人分必要になる。それでも、高校英語と共通点の多い試験なら、ある程度は高校の授業が受験対策になるだろう。しかし今回の7種類の英語民間試験には、高校英語では対策できない内容も数多く含まれている。そして、高校英語に対する「実用性がない」という批判は根強い。

「もちろん、教育現場の教育のシステムを見直す提案は、必要だと思います。でも今回の英語民間試験の導入は、企業サイドに要請されて『大学新卒で就職する時には英語をある程度話せるように』ということですよね。せめて5年以上の時間をかけて、じっくり見直すのならともかく、『思いつき』のような唐突さを感じます」(ミユキさん)

低所得世帯の子どもだけではなく
障害のある子どもも機会を奪われる

 そして英語民間試験は、低所得世帯の子どもだけではなく、障害のある高校生からも機会を奪うかもしれない。30年以上前、ミユキさんの知る範囲に、聾(ろう)学校に通う聴覚障害の生徒がいた。当時の学校英語は「読む」「書く」が中心だった。

「でも、その子は英語の読み書きが非常に得意で、『翻訳家になりたい』という夢を持って、大学の英文科を目指していました。そういう夢も、絶たれてしまうんでしょうか」(ミユキさん)

 障害者に対する合理的配慮は、英語民間試験の導入にあたって、特に懸念されている点の1つだ。身体障害のためマークシートが塗れない筆者にとっても、他人事ではない。