学生バイトで書店の
面白さに取りつかれた

 出版流通の仕組みは、出版社(版元)を起点に、出版物が取次(卸)に流れ、書店に届く。3者の取り分は、出版社70%、取次8%、書店22%――が一般的だと言われる。1500円の単行本を1冊売れば、出版社には1050円が入り、取次は120円を取り、書店には330円が入る。

1冊ずつ本を吟味して並べた「編集された本棚」。店内を歩き回る事で、偶然の出合いが生まれる

 堀部の手法は、このうちの取次を中抜きし、書店の取り分を30%、つまり1500円の本を売れば、450円を書店の粗利にしようというのである。紀伊國屋書店のような大手書店が、一部の書籍に限り、取次を通さずに出版社と直取引をするという例はこれまでもあった。しかし、街の一書店が、すべての書籍を直取引で商売しようというのは、誠光社だけだろう。

「書店が本だけを売って経営が成り立つかどうかは、掛け率が要(かなめ)となるんです。うちのように月商300万円で、掛け率が20%なら粗利は60万円ですが、30%になると90万円に増えます。この30万円の違いは非常に大きいんです。あとは支出をどうやって抑えるかです。私の場合、1階を店舗にし、2階を住居にしています。店は、基本的に妻と2人で切りまわしているので、人件費も発生しません。そうすると、本を売るだけで、書店経営が成り立つんです。子どもを保育所に預け、夜になったら近所の人たちと飲みに行くぐらいの生活を送ることができます」

 京都出身の堀部が書店経営にかかわるのは、立命館大学の学生のときにさかのぼる。京都に3店舗を構える恵文社の一乗寺店にアルバイトとして働き始め、そのおもしろさに取りつかれて、2002年からは店長となった。

 恵文社は、日本出版販売を取次として書籍と雑誌を仕入れ、各書店員が、それぞれの棚を受け持ち、どの商品をどのように並べるのかを決める。書店業界のセレクトショップ化の走りであり、どの棚もこだわって作られた。店員は、手作りのポップを作って本の売り上げを伸ばそうとした。

 独自の店舗運営が注目され、店を訪れる客数は伸びた。英ガーディアン紙が2008年、一乗店を「世界の素晴らしい書店10選」に選んだことで、注目度がさらに高まる。観光名所のようになり、観光客も訪れるようになった。しかし、120坪ほどの店舗に、正社員とアルバイトを合わせて15人が働いており、経営という面では決してラクではなかった。その後、店舗内に、衣食住にまつわる書籍と生活雑貨を扱う生活館というフロアを併設した。

 そのころから、徐々に雑貨の取り扱いが増えた。堀部は当時、雑誌の取材にこう答えている。

「雑貨って利益率が高いだけではなくて、買いやすいし、単価も本とはぜんぜん違うことがわかりました。1万円の本と同じ価格のかばんでは、同じ値段でも買いやすさは違いますよね。つまり、雑貨は、単価が違う上に、買うための心理的なハードルが低く思えるからよく売れるし、利益にもなる。観光地のように味のある書店を訪問してみたい、という人にとっても、雑貨は記念品のような存在になっていったわけです」(「ちゃぶ台、Vol.3」)