「企業のスター」も
エリートだけではない

 さて、前置きが長くなったが、企業におけるスター(重要な仕事をする人)も、同様に3つに分類することができるだろう。

(1)王道スター的なエリート

 個としての知的能力(若手の頃からの整理、分析、創造、統合力)が高いうえに、集団の中においても人を引きつけ、自然とリーダー的な役割を任されるような人がいる。企業としては、こういう人に対しては、将来の会社を担ってもらいたいという期待をかけ、会社の中にある、出世の王道コースを歩ませていく。

(2)実績や堅実な仕事ぶりが認められ、日の当たる道へ

 会社の本部としては、当初ノーマークでありながら、実力のある上司や眼力のある役員と一緒に仕事をした際に、「こいつはなかなかイケる」と評価されたことをきっかけに、道が開かれ、重職に任用されることがある。着実な仕事ぶりと実績の積み上げで、次第に誰からも評価されるようになるケースもあるだろう。
 
(3)時代のトレンドに乗った人
 
 かつて、国内畑から海外畑にウエートがシフトし、少し前には欧米からアジアに比重が移り、昨今はデジタル系の人が重要視されるようになってきている。

 このように、その会社において“傍流”とみなされていた業務が、時代の変化で、主流になることがある。したがって、その人の絶対的な能力というよりも、必要に迫られて、新しいトレンドに合う人が、重要な役割を演じることになるケースである。

「遅咲き」社員を活用できない
企業の問題点

 さて、本論の「遅咲き」について語ると、(1)はなく、(2)と(3)の中には遅咲き社員が多数存在することになる。

 とはいえ、やはりトップ(社長)になる人材は基本的には(1)である。というのは、この社長レースを含めた、全体の人材マネジメントシステムとは、マラソンの生き残りレースのようなものなのだ。基本的には、徐々に小さな差が開いていき、自分の立ち位置が年月を経るごとにだんだん明確になり、他人を追い越せない状況を自覚して諦めていくコンセンサス・ビルディング(合意形成)を上手に行う仕組みでもある。

 したがって、(2)のタイプで実力者の目に留まったとしても、それだけで2階級特進させるわけにもいかないし(そんなことをしたらしたで、全体の秩序が乱れて大問題になる)、(3)の傍流のリーダーをいきなりトップに持ってくるには、社内的な軋轢(あつれき)が大きすぎる。

 そうした事情から、(1)がトップに就き、(2)や(3)が周りを固めるという人事になりやすい(少なくとも過去はそうであった)。