人材がいないのではなく
「見る目がない」だけ

 俳優の場合、今は1クール3ヵ月というタームで新しいドラマが作られる。その良しあしは別問題としてあるものの、今は深夜枠もあり、キャスティングにおいて、(2)や(3)の人材を登用するために、新しい挑戦をしてみる機会は豊富にある。最初に掲げた俳優たちは、それを足がかりにスターになっていった。

 企業にも、実は関係会社のポストや海外支社のポストなど、力を発揮するチャンスはいくらでもあるし、キラキラしているスターの卵はいくらでもいる。それを発掘し、生かすも生かさぬも企業の人材(人事部だけの仕事ではない)に対する意欲にかかっている。

 どんなに個人が能力を伸長させる努力をしていても、それだけでは花は開かない。実際に役に就けて演じさせてこそ――企業であれば現場において実務を経験させてこそ、その潜在能力は発揮され、実力が磨かれていくのである。
 
 人材がいないと嘆く会社に、人材がいないのではない。人をしっかりと見ていないだけ、見る目がないだけ、やらせていないだけなのだ。(1)を積極的に発掘することも重要であると同時に、最初からスターではないが、(2)(3)にあたるような人材を発見し、プールし、登用して経験を積ませるという仕組みを整えなければならない。街歩きとグルメ番組、ひな壇芸人のおしゃべりばかりのテレビだが、ドラマにおける俳優発掘メカニズムからは学べることが多い。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)