では本来、どうあるべきか。

 まず、(1)王道エリートは、やはり必要である。早くから場数を踏み、場慣れし、国際会議などにも出てグローバルな場で対外的な折衝術を身につけ、規格競争などにおいても活躍してくれるような人がいないと、品質や価格競争以前に負けてしまう。

 ただ、現行の問題は、(1)におけるエリート育成のプロセスが、社内の組織やリーダーとしての人心掌握のための旧式のものになっており、アップデートされていないことである。

 人的ネットワークづくり以外に意味のない社内の部署異動ローテーションなどやめにして、もっと厳しい修羅場を経験させ続けることが必要である。ひ弱な社内エリートでは到底、海外勢に太刀打ちできない。この(1)において日本の大企業の人材不足は顕著といえよう。

(2)の突然日の目を見るタイプはどうだろうか。

 このタイプを発掘するシステムを持つ会社と持たない会社では、大きく成果が分かれる。たとえば、社長や役員が事務所や関連会社に出かけた際に、必ず有望な若手にプレゼンの機会を与え、ポテンシャルがあると判断された人には、より難易度の高い機会が与えられるような仕組みにしている会社がある(これはGEの方式に倣ったものだ)。一方で、定期的に人材発掘ができるような仕組みが一切なく、人材発掘が千載一遇のチャンスに任されている会社もある(後者のほうが圧倒的に多い)。優秀で有望な社員はいくらでもいるのに、人事として、こうした人材を定期的に発掘する仕組みを発動させ、そこで得た情報をデータベース化して活用しなければもったいない。

 中井貴一がいなくても、いつか吉田羊は発見されたかもしれないが、もう少し「引き上げる」のが遅れていたら、彼女は女優をやめていたかもしれない。会社は、もっと組織内に眠る優秀な人材の発掘に積極的であるべきだ。

 そして、(3)時代のトレンドに乗った人について。この領域の人には、傍流などといっていないで、どんどん大きな仕事をしてもらわなくてはならない。にもかかわらず、会社の主流派の理解がなく、重職に就けないという例をいたるところで見てきた。

 たとえば、すべてがデジタル化へシフトしている時代なのに、いまだデジタル系の役員がおらず、時代の変化についていけていない会社も多い。あるいは、新領域における責任者のポストを作っても、その責任者の力量が社会の求めるレベルに全く達していないケースも散見される。

 この場合には、外部から人材をスカウトしなくてはならない。早いうちに手を打っていればそうした人材も採れるが、動きが遅いと、よその会社もこぞってそういう人材に事欠いているわけだから、全く採用できない。そして、いつまでも力量の劣る責任者を抱えたまま、事業はアップデートされず前に進まない。ますます、会社は時代に取り残されるという状況になる。