子どもへの心理的不安は
実際どれくらいあるのか?

 講談社ビーシー側も「未就学児を対象とした『知育図鑑』として適切な表現や情報ではない箇所があった」と内容の不適切さを認めたものの、一方でこれは「言論の弾圧ではないか」「自衛隊車両もはたらく車ではないか」といった一般読者の声も数多く上がった。

 公開されているアマゾンのレビュー評価は、児童書を考える団体各位から不適切認定を受けたにもかかわらず、5つ星のうち4.3と驚くほど高い。またレビューに書かれた否定的な意見も、実際に子どもに対して買い与え問題を感じたというよりも、この本の問題性を研究する資料として購入したという読者の感想が多く寄せられており、子どもにどれくらいの悪影響を及ぼしているのかを推測することは難しい。

 この議論を全く知らない親子に『はたらくくるま』を実際見てもらったが、子どもは、むしろ巻頭から8ページに渡って紹介される消防車両のほうが、「全部真っ赤で(視覚的に)嫌だ」という感想だった。

 もちろん、兵器が搭載されている車両と一般車両を並列で扱い、何も知らない未就学児に「戦争」や「武器」を身近に感じさせることへの問題は理解できるが、これを過剰に忖度すると、今度は「表現の自由」を考えなければならない。

 ちなみにこの図鑑を海外ではどう受け止められるかを、“Children's Literature in Education(教育における児童文学)”という、学校司書や教育関係者が集うグローバルなSNSグループに投げかけてみた。

 参考になる意見をいくつか抜粋して紹介してみよう。

「子どもたちは毎日のニュース報道で銃を見ています。この絵に対する日本の大騒ぎは理解できません」(アルゼンチン)

「この本の内容(軍事車両の意味)を幼い子どもに説明して理解できるとは到底思いません。私は3歳の息子と一緒にニュースは見ません。もし、本に書かれている年齢の子どもが、この本を読んで理解ができるというのは怖すぎます。日本では幼稚園の子どもが軍用機についての本を読んでも大丈夫だと思っていますか?」(カナダ)