お待たせしました。1903年夏学期(第4学期)、そして1903-04年冬学期(第5学期)にいたり、シュンペーターが履修する科目に経済学がぐんと増え、ウィーン大学、というより当時最先端だったオーストリア学派(ウィーン学派)の経済学者たちに師事することになった。まずはまた履修科目を拝見することにしよう。ちなみに、独墺圏の大学は卒業するまでに8学期(セメスター)ある。現在の日本にあてはめると、8学期で4学年に相当する。

シュンペーター
第4学期と第5学期の履修科目は?

 世紀末ウィーン文化が怒涛のようにヨーロッパを席巻した時期にあたる第4学期と第5学期の履修科目を見てみよう(※注1)。


 まずは、1903夏学期(第4学期)から。

「法哲学史・政治社会理論」
「パンデクテン復習」
「ドイツ相続法」
「教会法原論および同演習」
「教会財産法・刑法」
「国家教会法」
「学説語彙編纂演習(物権・相続法)
「ローマ法演習」
「ゲルマン法演習」
「14-16世紀欧州諸国の政治的社会的運動」★
「確率計算論」★
「数理統計学」★
「パンデクテン 債権特別部」
「論理学、近時の改革の試み」
「財政学演習」★

 ★が経済学関連科目だが、財政学、経済史、数学に集中している。選択の限界なのか、シュンペーターの指向なのだろうか。

 「財政学演習」は前期に引き続きロベルト・マイヤー名誉教授のゼミだ。「14-16世紀欧州諸国の政治的社会的運動」は、前期「ドイツ経済史演習」のクルト・カーザー私講師による講義である。

 本連載の前回、クルト・カーザーが1902年に発表した論文を紹介した。

 Kurt Kaser Zur politischen und sozialen Bewegung im deutschen Bürgertum des 15. und 16. Jahrhunderts, in: DeutscheGbll 3, 1902, S. 1-18, 49-60
(クルト・カーザー 15,16世紀ドイツ・ブルジョワジーにおける政治・社会運動)