JALは9月に株式再上場を予定していますが、過剰な政府支援による航空産業の競争の歪曲という問題点に加え、昨年3月の増資の段階でインサイダー取引が行われていたという批判も自民党などで巻き起こっています。後者の問題は“第二のリクルート事件”とも言える位にひどいですが、なぜこうした問題が生じたかを調べていくと、1人の人物に行き当たります。JAL再生を担った企業再生支援機構(以下「機構」と略す)の社外取締役の瀬戸英雄氏です。
「監督と執行の兼任」という行き過ぎ
まずJALを巡る経緯のおさらいをしておきましょう。JALが2010年1月に会社更生法を申請すると、政府が設立した機構がJALの管財人となり、公的資金を投入するとともに更正計画を策定しました。それに基づく更正手続きが2011年3月に終結し、JALは民間企業(非上場)に復活したのです。
この過程でのJAL再生の主役が瀬戸氏です。弁護士である瀬戸氏は、機構の側では、再生支援など重要事項の決定を行う意思決定機関である“企業再生支援委員会”の委員長に就いていました。JAL再生の監督サイドである機構のガバナンスを担う最高責任者の立場にあったのです。
ところが瀬戸氏は、機構がJAL支援を決定すると、JALの管財人(正確には管財人である機構の職務執行者)にも就きました。管財人の職務執行者というのはJAL再生の執行サイドの最高責任者ですので、監督サイドの最高責任者と執行サイドの最高責任者を瀬戸氏が1人で務める状態になったのです。
ちなみに、瀬戸氏は2011年に更生手続きが終了すると、JALの社外取締役に就任しています。今年6月には辞任していますが、機構は株式再上場までJALの最大株主であることを考えると、投資側の最高責任者と投資先の会社の取締役を兼ねるという、利益相反状態を1年以上も続けていたのです。