まず伝えるべきは投資の意味よりも
本人にとっての損得勘定から

 投資教育で伝えるべきだと思う内容を挙げてみよう。

(1)生活におけるお金の意味
(2)正しい損得計算の方法(利回り計算、割引現在価値、リスクの概念、まで)
(3)お金について計画を立てることの重要性とその方法
(4)投資の意味(投資家・企業・社会のそれぞれにとっての意味)
(5)金融商品の基礎知識(預金、債券、株式、保険)
(6)お金に関する制度(公的年金、DC〈確定拠出年金〉、つみたてNISA〈少額投資非課税制度〉など)
(7)金融ビジネスの仕組み

 私見では、多くの投資教育が「(4)投資の意味」に偏りすぎているように思う。ビジネスの意義、ビジネスにお金を出すことの意味、社会全体のお金の循環なども大切だが、「投資」は、お金を出す本人が「自分にとって得だ」と納得した上で行うのでなければならない。本人が損得を判断できるような基礎知識を授けることがまずは大切だ。

 例えば、株式投資の本質は「リスク・プレミアムのコレクション」だが、これを理解するためには、少なくとも割引現在価値の概念とリスクについて分かっていなければならないはずだ。

 割引現在価値の概念を理解していない人に株式投資を勧めるのは良くない。投資は、社会のためではなく本人が自分のために行うべきものだ。この基本を曲げてはいけない。「長期で投資すれば、たぶん絶対大丈夫だ」(「絶対」に「たぶん」が付く辺りからしてあやしいが)、「株式投資はいいことだ」、といった曖昧な根拠で投資を勧めて、結果に対しては「自己責任だ」と言い放つのでは、金融機関のセールスマンとしても下等な部類に入るだろう。