ライブミュージシャンのライブに行くという衝動は、あきらかに「カッコいい」が原動力となる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「カッコいい」という
言葉の正体を暴く

『「カッコいい」とは何か』書影『「カッコいい」とは何か』 平野啓一郎著 講談社刊 1000円+税

 先日、現代アートのコレクター会に参加した。特に予備知識も無く参加してみたら、これがとにかく面白い。

 例えば多摩美術大学の先輩(50代)であるアートコレクターに、何故この作品を購入したのですか?と聞くと、「これは一見、絵の構成に思えるけど写真なんですよ。見たことない画面でしょう」と言う。なるほど、一見それは抽象画のようだが、近づいて見ると実はNASAの建物であり、窓と壁はうまくトリミングされモンドリアンのような平面構成の抽象画に見える写真だった。

 同様に他の女性コレクターにも、なぜ作品を購入したのか理由を聞いてみると「黄色がカッコよかったから!」とキャンバス一面が黄色で塗られている作品を嬉しそうに解説してくれた。他にも「これは一発描きで、ビシッと決まっていたから」などと、皆が嬉しそうに他の人に対しても同じ熱量で何度も語っていた。

 それぞれ誰もが嬉しそうに語るので、見ているこちらまで嬉しくなった。その空間は例えるなら秋葉原だろうか。自分が好きなことをは堂々と好きといえる、誰にも侵害されない空間。そんなエネルギーに溢れていた。