野球人気は低下も
プロ野球の観客動員は右肩上がり
11月17日に決勝が行われた野球の世界大会「プレミア12」は、ライバル韓国を下した日本の優勝で幕を閉じ、本格的にオフシーズンが始まった。夏の甲子園期間に刊行された本書『野球消滅』にもうひとつ読みどきがあるとしたら、まさにこの総括の時期がふさわしいといえるだろう。
「プレミア12」での侍ジャパンの戦いぶりは、言うまでもなくすばらしかった。辞退者やケガによる離脱で必ずしも最強メンバーとはいえない布陣ながら、要所で打線が奮起。投げてもリリーフ陣を中心に、最後まで崩れることなくゲームを展開した。
その上で、大会の盛り上がりという意味では厳しい面があったのも事実。特に目立ったのが、観客動員の苦しさだ。終盤2試合の日韓戦を別にすれば、東京ドームでも連日空席が目立った。米国代表にメジャーリーガーがいっさい参加しないなど、大会自体の格の問題もあるだろう。だがもっと根本的な課題として指摘されているのが、野球人気の低下だ。
本書がいま読むとより一層味わい深くなる理由も、このあたりにある。中南米諸国から優秀な選手が次々に輩出される理由を徹底取材で明らかにした『中南米野球はなぜ強いのか』(首藤のレビュー)などで知られるスポーツライターの著者が、多くの証言と数字にあたりながら、野球界の実態と真の課題を解き明かしていく一冊だ。刊行から時を経て野球ファンにはある程度広まったと思われるが、いよいよ説得力が増したこのタイミングで、さらに広い方面に読まれてほしい。