為替手数料はいくらなのか、知っていますか?

「高利回り」の海外債券…<br />金利15%でも損する仕組みとは?安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPAN おカネ学株式会社 代表取締役 CFP、日経CNBCなどTVコメンテーター、海外ETF専門家、立教セカンドステージ大学講師
三菱UFJ銀行で17年、三菱UFJメリルリンチPB証券(出向)、ソシエテ・ジェネラル信託銀行勤務という、メガバンク、外資系証券・信託銀行で約26年の勤務を経験。その後半はプライベートバンカーを務め金融商品の運用について熟知。販売手数料(コミッション)を目的にしない、世界的潮流である「預かり資産管理」(フィーベース)のビジネス(RIA)を行う、独立系・投資助言業(内閣総理大臣登録)を2015年立ち上げる。著書に『個人型確定拠出年金iDeCoプロの運用教えてあげる!』(秀和システム)など。WEBサイトhttps://ria-japan.co.jp/

 もうひとつのワナが「為替手数料」です。

 トルコ・リラ債券に投資するためには、トルコ・リラに両替する必要があります。その手数料の水準を即座に答えられなかった人は、「高い買い物」をしている可能性があります。

 「日本円からリラに替えるのは、確か2円だったかな?」と答えられたとしても、「お答え、お見事です」とは私は言いません。「高い買い物」に気づいていない、残念な場合だと言わざるを得ないのです。

 なぜでしょうか?

 単純に2円と聞くとそんなに高くない気がしますが、為替の両替手数料を実際に検証してみましょう。仮にトルコ・リラの水準を1リラが20円だとします。

 日本円から、トルコ・リラに変更する、両替(為替)手数料が2円だとすると、ある事例では両替手数料はパーセント表示で、約9%になります。

 さらに、日本円からトルコ・リラに両替(片道)しただけで終わらないケースがあります。トルコ・リラで債券が満期を迎えた後は日本円に戻して支払う場合があるからです。この場合は、為替手数料は往復でかかることになります。

 約9%(片道手数料)×2回=約18%(往復手数料)

 つまり、片道9%、往復で18%もの「高い買い物」をしていますよ、ということなのです。実際に、某大手証券の事例では片道2円の手数料でした。

 高利率の債券を買った人からはこんな声が聞こえてきそうです。

 「えーッ!? 為替の手数料の説明なんて、今回、受けていないけど」
 「18%も手数料を払うなら、そんな商品買わない! 説明ないの、オカシイ!」

 そう、おかしいですよね。ちゃんと説明しないことも、不親切です。

 トルコ・リラ債券に投資をするのに、営業担当者(以下「販売者」と表現します)はこんな耳ざわりの良い説明をします。

 「表面利率、なんと15%ですよ!」
 「預金金利はご存じの通りほぼゼロ、もっと高い利回りを目指しませんか?」
 「債券の販売手数料は、ほかの金融商品と比べてとても安いんです」

 これらの説明にウソ、偽りはありません。

 しかし、問題は「隠れコスト」=為替の手数料の水準、その説明をしたか、どうかです。

 バカ正直に、「実は為替の手数料がメチャクチャ高いんです」とは販売者は言いません。自分たちが儲けとなる高い手数料がバレたら、買ってもらえないでしょう。

 実は為替手数料が高いのに、知らなかったという投資家が多いのはなぜでしょうか?

 ある大手証券の事例では、説明の資料に「トルコ・リラ債券」の内容は詳細に記載がされていました。

 しかし、為替手数料は、外貨建て債券に投資するずっと前、口座開設時などに前もって契約しています。為替手数料について実際の水準で説明する販売者が少ない(いない)からだと推測されます。

「高利回り」の海外債券…<br />金利15%でも損する仕組みとは?

 資料では「為替の手数料が別途かかります」としか記載がなく、これだけで、バカ高い手数料の説明は終了、表面利率15%に目が眩んだ投資家が、往復18%の手数料を金融機関に払ってしまうのです。