小澤竹俊医師(めぐみ在宅クリニック院長)小澤竹俊医師(めぐみ在宅クリニック院長)

名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第22回。在宅医療で3000人以上の患者を看取り、「ホスピスマインドの伝道師」として精力的な活動を続けてきた小澤竹俊医師(めぐみ在宅クリニック院長)を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

一人ひとりの穏やかな最期のために
「わかってくれる人に、私はなりたい」

「今度入院したら、もう家には戻って来られない。家で死にたい」――14年前、筆者の父親はそう言って、心臓の痛みをぎりぎりまで我慢した末に倒れ、救急搬送された。

 10代の頃から若年性糖尿病を患っており、血管はボロボロ。脳も心臓も複数回手術を受け、「もうできることはありません」と言われていたから、入院してもほぼ死を待つのみ。

 搬送から亡くなるまでの3カ月の間に3度退院し、母と交代で遠距離介護に臨んだが、いつ死んでもおかしくない重病人のケアは緊張の連続で、2カ月後には母も過労で入院。父は最期、病院で亡くなった。