「地域コミュニティーが機能しなくなり、つながりが希薄化。独居高齢者は孤立し、認知症患者は増加。社会保障費の高騰や地域資源の不足などから個人への負担が増えていくことが予想されます。また高齢の親を抱え、介護と仕事との両立が困難になって介護離職する40~50代が増え、日本経済を脅かすことにもなるでしょう。企業としては、一番の働き盛りに抜けられるわけですから。

 超高齢少子多死時代を前に、すべての人が人生の最期まで穏やかに暮らせる、持続可能な社会を実現したい。そんな思いで、2015年、一般社団法人『エンドオブライフ・ケア協会』を立ち上げ、終末期のケアを担う人材の育成をはじめました」

介護離職を防ぐには
レジリエンスをはぐくむことが大事

 人材育成といっても、プロフェッショナルの育成だけに取り組んでいるわけではない。

「超高齢少子多死時代を負の要素と捉えない発想が必要です。日本は世界に先駆けて、超高齢少子多死時代に突入するわけですから、それをチャンスと捉え、いち早く、誰もが最期まで穏やかに暮らせて、かつ経済も衰退させないような仕組みを構築できれば、やがてその仕組みを世界に輸出できるようになるでしょう。日本がリーダーになるのです。

 それには、働き盛りの40~50代が離職せずに、仕事と介護を両立させられる仕組みの構築が不可欠。特に、男性たちには変わってもらわなくてはなりません」

 2017年、ある講演会で先生が、「高齢の親御さんに対して、本人が望まない延命治療を無理強いするのは、圧倒的に50代の息子さんが多い」と話すのを聞き、筆者は理由を尋ねた。

「それまで親ときちんと向き合ってこなかったから、いざその時が来た時に、子どもとしての覚悟が全くない。だから右往左往し、本人が決して望まないことを強制する。最善という名の下、望まない延命治療をさせてしまう。特に、高齢の親を看取る機会が増えてくる50代ビジネスマンは、どうしても仕事優先。現実問題として、倒れる前に親としっかり向き合う時間を作れない人が多いため、そういうことになるのではないでしょうか」

 先生はその後、この世代を対象とするeラーニング・プログラムを立ち上げ、経営上のリスクマネジメントとして普及活動を行っている。

「健康経営のための企業の取り組みは、介護と仕事の両立を支援する制度の活用を促すことが主ですが、私はレジリエンス(しなやかさ)をはぐくむことのほうが必要だと思っています。