こうしたセルフハーディングが何度か繰り返されると、習慣ループが形成される。それによって生まれる社会的「ナッジ」は、行列に並んでタピオカを買うという状況をつくり出す。

 しかし、「ナッジ」はいつまでも続くものではない。商品や体験を通して、ハーディングからセルフハーディングへと消費者を導き、それを繰り返させて習慣として定着させることこそ大事なのである。このことは、早くもブームの終わりを予見されているタピオカブランドが解決していかなければならない、重要な課題でもある。

熱狂的なブームを生む
「心の家計簿」とは

 それにしても、人はなぜ長い時間を費やして行列に並ぶのか。実は熱狂的なブームの背後には、「心の家計簿」によって生じる消費行動の違いがある。

 リチャード・H・セイラー氏は、1980年代に「メンタル・アカウンティング(心の家計簿)」理論を発表した。人は無意識にお金を「心の家計簿」で分類してから買い物の意思決定を行う、というものだ。

 たとえば人は、自分へのご褒美や好きな人へのプレゼントとして、数十万円もする高級ブランドを買うことがあっても、普段飲むお茶やコーヒーは「お金かけるのはもったいない」から、なるべく安く済ませようとする習性を指す。つまり、「労働所得」よりも「娯楽費」に分類されたお金をより消費しやすい傾向がある。あぶく銭で投資した株が大損しても大して心が痛まないが、ボーナスを全て投入して擦ったパチンコはトラウマになる所以だ。

 さらに若い世代は、収入の大部分を「娯楽費」に分類する傾向がある。 したがって、タピオカが若い世代を中心にブームになっていることも説明は付く。