そのこと自体は、非正規労働者の老後の生活を安定させるわけであるから、望ましいことだろうが、非正規労働者の中には日々の生活が苦しく、当座の年金保険料が負担だという人も多い。

 正社員の諸手当を削った分で、非正規労働者の時給を大幅に引き上げ、非正規労働者が年金保険料を無理なく支払えるようになることが望まれるが、そこに至るメカニズムが見えにくい点は懸念材料であろう。

 政府からも、「同一労働同一賃金は正社員の賃金を押し下げるのみならず、非正規労働者の賃金を押し上げる双方向の動きとすべし」といった働きかけをお願いしたい。

「同一労働同一賃金」の概念には疑問も

 余談であるが、実は筆者は同一労働同一賃金という概念に疑問を持っている。「過去1時間の仕事内容が同じだったから、同じ時給を払うべきだ」という主張には違和感を覚えるからだ。

 転勤命令で単身赴任をさせられ、残業命令で予定をキャンセルせざるを得ないリスクを抱えている正社員と、そうしたリスクとほぼ無縁の非正規労働者では、「同一労働」とはいえない。これについては、「同一労働同一賃金と同時に働き方改革も進めるべきだ」ということになろうが、容易ではなかろう。

 反対に、「非正規労働者の方が雇用の保証がない分だけ時給が高くて当然だ」という考え方もあるだろう。そうなると、正社員は「終身雇用を保証する代わりに生涯賃金は低くても我慢しろ」ということも考えられる。

 こうしたことを考えると、同一労働同一賃金というスローガン自体には賛成できない。

 非正規労働者として生計を立てようと頑張っている人がワーキング・プアと呼ばれるような状況は改善されるべきであり、その点から「非正規労働者の待遇を改善しよう」という提案には賛成である。

 しかし、正社員と非正規社員には背負うリスクの差があるなかで、「同一労働同一賃金」という概念だけで両者の格差是正を行うのはいささか乱暴ではないだろうか。