開幕まで約7カ月に迫った東京五輪の男子サッカー競技へ、日本代表で一時代を築いた33歳のMF本田圭佑が参戦を熱望している。開幕時で23歳以下という年齢制限の対象外となる、オーバーエイジでの代表入りの野望を唐突にぶち上げたのが昨夏。東京五輪代表チームを率いる森保一監督へ、大胆不敵なラブコールは果たして届くのか。指揮官が思い描く戦略も含めて、最大で3枠あるオーバーエイジの行方と、今年11月に加入したばかりにフィテッセを23日になって電撃的に退団し、再び所属チームなしの状態となった本田の現状を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
東京五輪のオーバーエイジ枠出場を
現役続行の目標に据えた本田圭佑
何度も送った熱いラブコールが、メディアでは注目を集めるものの、意中の人の胸中にはなかなか響かない。来夏に迫る東京五輪へオーバーエイジでの出場を公言する本田圭佑と、五輪代表チームを率いる森保一監督の今現在の関係を例えれば、本田の片思いとなるだろうか。
南アフリカ、ブラジル、そして昨夏のロシアと3大会連続でワールドカップに出場。すべての大会でゴールとアシストを決めてきた本田が、東京五輪に出場して金メダル獲得に貢献すると、次なる目標を唐突にぶちあげたのは昨年8月2日だった。
「東京五輪にオーバーエイジとして出場することを目標に現役を続けて、あと2年、ガッツリと自分を鍛えあげようと思っています。タイミングよく自国開催の五輪が来てくれることを個人的には運命に感じていて、これは目指さないといけないと、勝手に感じています」
当時の本田はパチューカ(メキシコ)を退団し、一時的に無所属の状態だった。アメリカ人の俳優ウィル・スミスとの商談で訪れていたカリブ海のバハマから生出演した、インターネットテレビ局『AbemaTV』のニュース番組内で公言する、いかにも本田らしい演出でサッカー界を驚かせた。
五輪における男子サッカー競技は、1992年のバルセロナ大会から開催時で23歳以下という年齢制限が設けられてきた。プロ選手の出場を望む国際オリンピック委員会(IOC)と、ワールドカップとの差別化を図りたい国際サッカー連盟(FIFA)が妥協した答えが年齢制限だった。
しかし、歴代の人気競技だった男子サッカーは、バルセロナ大会で開催国スペインが金メダルを獲得したにもかかわらず、観客動員数が伸び悩んだ。スター選手の不在を嘆いたIOCが再びFIFAと折衝を重ね、1996年のアトランタ大会から導入されたのがオーバーエイジ制度だった。