究極の売り手市場の中、各企業は優秀かつ適性の高い人材を獲得するために、さまざまな採用方法にチャレンジしている。どうすれば望む人材を確保できるのか。ユニークな取り組みを紹介する。(取材・文/嶺 竜一)
広告代理店のADKグループ(以下、ADK)は、2020年卒採用から「スタメン採用」をスタートした。これは、自分の強み一つで選考に応募でき、新入社員からいきなりスターティングメンバーとして活躍できるという新しい採用方法だ。
現場社員への調査から同社が求める人物像を抽出し、九つのポジションを設定。それぞれにエントリーシートを設け、「われこそは!」という応募者を募る形で採用活動を行った。
ポジションは、「ザ・イノベーター=世の中に大きな影響を与えたい、野心家」「テックギーク=真新しいテクノロジーやデータを扱うのが好き」「ロジカルモンスター=戦略的にモノを考えるのが好き」「ハイパーオタク=好きなことは極めないと気がすまない」など、非常に個性的だ(下図参照)。1次面接ではそのポジションの人材を望む現場社員が面接官を務めることになる。
「面接に来た時点で、当社の現場が望む人物像と、学生の強みのマッチングが終わっているので、面接官個人が望む人物と学生のキャラクターの相性のズレからくる、無駄なミスマッチがなくなった。学生からすれば、伝えたいことを伝えきれずに落ちてしまう、当社としてもその人の本当の魅力に気付けないまま落としてしまう機会損失が少なくなった」と人事企画部の片野倫子氏は言う。
1次面接を通過した後は、その面接官が「スカウト社員」となり、その後の選考を後押しする。2次面接は、好きなツールを使って、学生が自分をプレゼンテーションするスタイルで行われるのだが、事前にスカウト社員と学生が1時間、1対1で「スタメンキャンプ」と称する面接対策を行う。フリップや映像を使う学生が多いが、得意のけん玉を使ったり、腕人形を使ったり、居酒屋でバイトしていた学生はメニュー表を使ったり、チアリーダーだった学生は応援スタイルで行ったりと、個性豊かだ。