留年採用を始めた
東急エージェンシーの狙い

「留年は、財産だ。」

 こんなキャッチコピーで大学を留年した学生を対象に「留年採用」を行っているのは、広告代理店の東急エージェンシーだ。

「当社が求める人物像は以前から大きく変わっていない。それはぶれない軸があり、困難に打ち勝ち、乗り越えていける人材。そうした基準を基に制度設計を考えた末に、留年採用が生まれた」と澤田桐智・人事企画部部長は言う。

 ただ漫然と留年した人はもちろん対象外だ。アルバイトを頑張り過ぎて店長になってしまった人、海外留学に行ったまましばらく住み着いてしまった人、起業したら事業が忙し過ぎて学業どころじゃなかった人など、留年してしまうほど何かにのめり込み、それが「財産」となっている人を求めているのである。

 この制度を考えたのは、大学で4年留年して8年生までいたという同社のプランナーの社員。学生時代には多くの年代の大学生をまとめて、大学間のネットワークを広げて多くの人を動かした経験を持つ。しかし当然、就職には苦労した。最初は小さな広告代理店に入社し、転職を重ねて東急エージェンシーに入社。今はネットワークをつくる能力を生かし、デジタルコミュニケーションの領域で、エース級の活躍をしているという。

 一般的に留年は採用においてはマイナスに働くが、むしろこの留年採用では留年がアピールポイントになる。若い頃、がむしゃらになった体験こそが、その後、社会人になってからぶちあたる壁を乗り越える力になるのだ。

 19年入社では、5人が留年採用。留年の理由は、海外留学、音楽活動、マスコミに入りたくて就職留年した、映画の配給会社でインターンシップをして映像制作していた、大学院進学を悩んだ末にやめて、一年間さまざまなアルバイトをしていたなど、かなりユニークな経験の持ち主ばかりだ。

 「当社が携わる渋谷の駅前開発は28年まで続く。そのプロジェクトでは、新しい商業ビルの広告やプロモーションだけでなく、地主や住民などのステークホルダーとの調整、設計や内装、テナントの選定などあらゆることに当社は関わっていくことになる。だからこそ、がむしゃらにいろんな経験をしたバラエティー豊かな人材を求めている」(澤田氏)

 採用方法にはその会社のカルチャーが表れる。いろいろと比較してみるといいだろう。