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データサイエンティストの冒険

【新連載】アナリティクスとの出会い――知る力、予見の力がもたらす新たな世界

工藤卓哉 [アクセンチュア]
【第1回】 2012年8月6日
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 2006年、カナダのバンフという保養地を旅行中だった筆者の携帯に一本の留守番電話が入った。Farzad本人からである。彼はハーバード大学で教鞭を執っていた当時から、革新的な医療IT政策制度設計者として知られ、コロンビア大学の公共政策の大学院にいた筆者もそれとなく噂で聞いていた有名人であった。

 正直、まさかあの著名なFarzadが、と驚いて、ウェブ上で何度も彼の名前と経歴をGoogleし、旅先から繰り返し確認した。何ごとか分からないが、名物副長官からの入電なので、旅行中なのも忘れて急いで電話してみると、「大学院のウェブでレジュメを見て興味を持った。約70億ドルの政策助成金を得て、これから大きな政策を設計するから、ニューヨークに戻ったら一度会わないか」と言われ、ドラマさながらの劇的かつ直截的な内容に面喰らったが(日本でこういうシチュエーションは無いと思う)、その場はスケジュール調整だけし、数分で電話が終わった。

 とにかく早い。その翌週には彼の執務室で面談したのを鮮明に覚えている。会って開口一番「面白い経歴を持っているね。なぜビジネスを辞めて政策をやろうと思ったの?」とだけ言われ、数名いる彼の補佐官を前に筆者の回答が始まった。そこには日本的な「なぜ転職したいのか?」などと無味乾燥な質問はない。筆者の回答は単純なものだった。

 「気分を害さないでいただきたいが、先端技術の採用が最も遅れている場所(政府)で技術移転をすれば、最大の効果が出ると思った。また一番自分が求められていて、かつ立ち遅れている分野だから、言ってみれば簡単なミクロ経済の市場均衡論に基づいて動きました。自分がやれることで、最大のインパクトを与えたいというのが一つ目です。

 それに政府は企業と違うターゲットがいるのが醍醐味です。企業経営でターゲットとするのが富裕層や優良顧客であるのに対し、貧困層や、不平等の改善が公共政策の使命です。これは私も経験がなく試練です。どうせやるなら全く違う領域を見てみたい。これが二つ目です。

 最後に、偽善者ではないので言いますが、お金は必要です。でも、人のためにというのは、単にカネのためと言うよりやりがいもありませんか? これが三つ目です。あなたはどうです?」と物怖じせずに切り返したのを覚えている。

 その時Farzadは、「いいね」と一言だけ言うと、「Taku, Data is power and never lie. You know the power of Analytics right?」と言い、アナリティクスについてホワイトボードを使って語り始めた。これがアナリティクスという単語との最初の出会いである。

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工藤卓哉
[アクセンチュア]

Accenture Data Science Center of Excellence グローバル統括 兼
アクセンチュア アプライド・インテリジェンス マネジング・ディレクター
ARISE analytics Chief Science Officer (CSO)

慶應義塾大学を卒業しアクセンチュアに入社。コンサルタントとして活躍後、コロンビア大学国際公共政策大学院で学ぶため退職。同大学院で修士号を取得後、ブルームバーグ市長政権下のニューヨーク市で統計ディレクター職を歴任。在任中、カーネギーメロン工科大学情報技術科学大学院で修士号の取得も果たす。2011年にアクセンチュアに復職。 2016年11月より現職。 データサイエンスに関する数多くの著書、寄稿の執筆、講演活動を実施。


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