隣の同僚はライバル。ギスギスした空気の中で、、、

 この会社では福岡支店、東京支店に限らず、支店長は「隣の支店に負けるな」と社員を叱咤し、営業所長は「隣の営業所に負けるな」と吠え、営業員は「隣の営業員に負けてたまるか」と同僚をライバル視する。そんな空気が充満していました。そのため、ノウハウの共有や悩みごとの相談といった協力体制を築くのが難しい状況にあったのです。

 しかし、支店長は考えました。万が一、この会社が倒産したとしたらどうなるか。救われるのは優秀な支店の優秀な営業員だけだろうか。

 そんなことはありません。成績に関係なく社員全員が職を失い、家族とともに全員大変な状況に陥るはずです。そのときになって「ああ、会社が潰れないように協力し合えばよかった」と後悔しても、もう遅いのです。支店長は、チーム全員を集め、訴えました。

「同僚は決して『敵』ではない。仲間だ。本当の『敵』は市場だ。社内ではお互いに協力して、市場での競争力を高めよう」

 そして自ら、行動を変えました。メンバーの営業に積極的に同行し、お客さまの声を今まで以上に聞き、社内で共有したのです。

「メンバーにああしろ、こうしろと言うだけではだめだ。自ら『どうしたいのか』を示さないと」

 この思いを持って支店長は、オフィスから出て「市場」に身をさらし始めたのです。チームは徐々に変わりました。意識が「社内」から「市場」へと向き始めたのです。戦うべきは「隣の同僚」ではなく「市場」です。

 社内で足の引っ張り合いをしている間に、他社に市場を奪われてしまっては意味がありません。採用が抑えられている今だからこそ、部下には「市場」への意識を徹底させましょう。