既存プロダクトは過去実績で語る

朝倉:複雑性が高い状況という点で言うと、例えば、既にシリーズB、シリーズCと、何度か外部からの資金調達を重ねているスタートアップの場合、自分たちの既存プロダクトは細かい粒度、確度で物事を語っていて、なおかつ、新しく始めるプロダクトについても、その既存プロダクトと同程度の確信を持って外部と話していると、聞き手と話し手との間でコミュニケーションが噛み合わないことが往々に起こるように感じます。

スタートアップ側としては、既に自分たちはシリーズB、Cといった段階の、事業が確立した会社であるという認識にもとづいて、新規プロダクトも既存プロダクトと同じような確度で語っているけれども、聞き手は「それはそれ、これはこれ」で、新規事業についてはゼロからの目線で評価するため、両者の話が噛み合わないといった状況です。

村上:そういった複雑性によるコミュニケーションの齟齬を緩和するためには、事業計画の説明の際に、過去の実績数値を活用するのがいいんだと思います。既存事業は過去数値からのトラックレコードの延長線で説明ができる。一方で、新規事業には過去数値がありませんから、よりロジックや戦略の説明が重視されます。

両者は、過去数値の有無の点で、重ね合わせることにそもそも無理があります。そこを理解し、既存事業は過去数値を重視して説明し、新規事業はロジックや戦略性を重視して説明する、というように分けて説明する癖を付けると、聞く側も理解しやすくなるんじゃないでしょうか。