目下のところ、石油元売り各社は最悪シナリオであるホルムズ海峡封鎖による供給途絶に備え、法律で定められている70日間の「民間備蓄」以外にも対策を練らなくてはならない。

 JXTGホールディングスの杉森務社長はかねてから危機感を持って「原油調達の多様化に努める」と語っていた。

 ただ、それは簡単なものではない。石油元売り各社が整備している国内の多くの製油所は、基本的に中東産原油の性質に合わせた装置構成になっている。性質の違う原油を調達すれば石油精製のコストが上がる悩ましさを抱えているのだ。

米イラン問題だけじゃない
元売りに募る危機感

 危機感を募らせるのは、ホルムズ海峡封鎖の可能性だけではない。

 一時的な武力衝突などの地政学要因による瞬間最大風速的な乱高下はあるものの、原油価格は基本的に世界の石油需給バランスによって決まるといえる。

 そこに影響を与えるのが、世界における脱炭素化だ。

 電気自動車の普及や脱プラスチックなどの動きが加速すれば、石油需給のバランスが崩れ、原油価格は下落する傾向を見せるだろう。原油価格の下落は、石油元売り各社の売り上げも縮小することを意味する。

 石油元売り業界は、緊迫する中東情勢をにらみながら、エネルギーの安定供給と脱炭素化への対応という難題に向き合わなければならない。