「日本経済新聞」(7月24日朝刊)に「エコノミスト、一流への道」と題して、民間の著名エコノミストの経歴をまとめた記事が載っていた。経済について書いたり語ったりしてお金をもらっている人は、広い意味では皆エコノミストだが、ここでは、金融機関や研究所などに所属して、経済予測や政策提言などを発信する、組織内の役職としてのエコノミストが話題の中心である。

 金融機関に就職して、調査部門に所属し、政府機関や海外などで経験を積み、外に名を売り、企業内で功成り名を遂げ、その後は、政府の役職や日本銀行の政策委員に取り立てられるような活躍もあるし、外資系金融機関に転職すれば年収3000万円もあり得る、というのが、記事が紹介する典型的なエコノミストのキャリア像だ。

 海外のエコノミストは、経済学博士クラスの学歴保有者が多いが、日本では、大学の学部卒程度の最終学歴保有者が少なくないし、卒業した学部も法学部、文学部などの出身者がいるなど、学歴的なハードルは低い。経済学的に高度な議論や論文が要求されることよりも、顧客受けするコメントができる、看板タレント兼高級接客係のような仕事が現実には多い。博士号取得までに時間をかけて人物を「堅く」することよりも、早く実務経験を積ませるほうが人材育成的には合理的な面がある。

 彼らの顧客(機関投資家)側に長くいた経験からいうと、理論モデルや学歴は経済予測の精度にはほとんど関係ないとはいうものの、もう少し理論的に筋の通った話が聞けると「ありがたみ」が増すのに、と残念に思ったことが何度かある。もっとも、高い学位を持った外資系金融機関の外国人エコノミストのレポートやコメントに深く感心した記憶もない。