ブラックボックスの
情報開示が進んだ

 とはいえ、これはかなりハードルの高いことでもある。理由の一つは、自分のところで採用されている商品の手数料水準が他社に比べて高いかどうかがわからないこと、そして二つ目はいくら声を上げても会社が聞き入れてくれないという傾向があるからだ。

 ところが最初の理由については、2019年7月から制度が改定となり、全ての運営管理機関は自社が選定した運用商品を全て開示しなくてはならなくなった。これによって、自社の商品よりも手数料の安い商品が他社に提供されているかどうかは、白日のもとにさらされる。予想通り、運営管理機関の多くはこの開示に反対で、現在もなお、この一覧表は運営管理機関のサイトでも、どこにあるかがわからない非常に見づらいところに置いてある。できれば見てほしくないのが本音なのだ。

 これに対して厚生労働省は19年11月から各運営管理機関の商品一覧のページをまとめて見られるようにした。ここでリンク先をクリックすれば各運営管理機関の一覧ページに飛ぶし、NPO法人「確定拠出年金教育協会」のHPからでも見ることができる。

 いわばこれらはブラックボックスだったものをオープンにしたわけであるから、ぜひ多くの企業型加入者には見てほしいものである。自社で採用されている商品があまりにも手数料の高いものであれば、声を上げるべきだろう。

 ただ、二つ目のハードル、声を上げても会社が聞き入れてくれないということも事実としてはある。

 実際、社内で確定拠出年金を担当する部署の多くは人事部や総務部であるが、彼らは面倒なことはしたくないし、忙しい。したがって、そんな社員の声を聞いてくれないということは起こりがちである。

 しかしながら、前述したように確定拠出年金法で定められている、加入者に対する忠実義務は、会社側がまさにこういう声を真摯に受け止めて検討し、それでもやらないというのであれば、その理由をきちんと説明する責任があるはずだ。そういうことを曖昧にしたままで放っておくと、将来、従業員から「忠実義務違反」で訴訟が起きるという可能性だって否定できない。同じカテゴリー、同じ運用手法の投資信託なのに、手数料が違うだけで最終的な資産の増え方が異なってくるという結果になってしまえば、これは明らかに説明義務に対する会社の事務局および経営者の怠慢といえるからだ。

 日本という社会は、最近の「かんぽ生命」事件でも、以前にあった「マンションの耐震偽装」でも、何か問題が起こって騒ぎにならないと解決に至らないという傾向がある。そういう意味では将来、確定拠出年金のガバナンスの問題で訴訟が起こったとしても、それは実態が改善される良いきっかけになるかもしれないが、できることなら、そうならないうちに見直しが行われる方が良いに決まっている。

 ぜひ今年は運用商品のブラックボックスを開けてみて、声を上げることを考えてみてはいかがだろうか。

(経済コラムニスト 大江英樹)