ですから、体操で行うようなすばやい方向転換などの敏捷な身のこなしや、状況判断・予測などの思考判断を必要とする全身運動は「脳をたくさん働かせ、成長させること」につながるわけです。

 ところが、最近の子どもは脳への刺激が減っているように感じます。というのも、幼稚園に通わせているお母さんから、「最近の子は“要介護状態”のようです」という話を聞いたからです。言われてみれば、最近は幼稚園へや習い事の送り迎えは自転車や車。家はマンションで、エレベーターで自宅階へ上がる。帰ってからは、外遊びをすることもなく家の中でおもちゃやゲームをして過ごす……という生活パターンを送っている子どもたちが少なくないように感じます。

 遊び場がないというだけでなく、歩いてすらもいないわけです。ですからその分、幼稚園や保育園で十分に体を動かせればいいのですが、それもなかなか難しいのが現実です。園庭がないところや、あっても狭いところなど、厳しい条件のところもあるからです。

子どもの脳を育てるには正しい順番がある!

 脳の成長には、順番があります。最初に、体を司る部分。主に、大脳辺縁系、視床、視床下部、中脳、橋、延髄などが続き、生後5年くらいかけて育っていきます。

 次に成長するのは、言語や微細運動、思考などを司る部分です。主に大脳新皮質のあたりで、1歳頃からは育ちはじめ、学校での学習などから刺激を受けて、時間をかけて18歳くらいまで成長します。いわゆる「脳」と言って私たちが真っ先にイメージする、「頭がいい、悪い」の判断材料になる記憶力や計算力、語彙力などです。こうした認知能力は、この部分の成長によって発達していきます。

 最後に、10歳を過ぎた頃から、心を司る前頭葉が育ちます。非認知能力と呼ばれる心の動きは、人間が人間であるために必要な高度な機能です。

 子どもの脳の成長を促すには、この順番を守ることが重要だと言われています。つまり、体がしっかりコントロールできないうちから、計算や読み書きだけをさせても学力は伸びにくいし、挑戦する心やリーダーシップなどは身につきにくいのです。

 そこで、体操はこの「身体」「頭」「心」をバランスよく育てるのに効果的です。不安定な場所を走ったり、体操特有の浮遊感などを体験することで体を動かす楽しさを知るようになると、体を動かす楽しさを知った子たちはじきに動きが安定していき、自ら考えて新しいやり方や少し難しいことへチャレンジを始めます。このように、「体操」といっても、たんに運動能力があがるだけでは決してないのです。