除雪体制を構築しても
首都圏では大して意味がない
その東京を支える交通機関である鉄道は、残念ながら雪に弱い。鉄のレールと鉄の車輪で走る特性上、雪がレールや車輪に付着すると摩擦が低下し、加速や制動距離への影響が避けられないからだ。
実際、2014年2月の大雪では、東急東横線の列車が滑って止まり切れず、元住吉駅に停車中の列車に追突するという事故も起きている。制動距離に余裕を持たせるためには速度を抑えるしかなく、減速運転すれば通常のダイヤを維持することはできない。そのため、通常よりも本数を減らした「間引き運転」を強いられることになる。
こうした状況に対し、雪国の鉄道のような除雪装置を整備できないのかと指摘されることがある。道路や空港が閉鎖されても運行を継続する雪国の鉄道が雪に強い乗り物として認知されているように、車両側と地上側の両方で万全の除雪体制を敷くことで、雪の影響を最小限にすることは不可能ではない。ただそれは、列車本数の少ないローカル線だから成り立つのであって、仮に莫大な資金を投じて東京圏で除雪体制を構築したとしても、過密ダイヤに対応することは不可能である。
具体的な運行本数で考えてみよう。ラッシュ時間帯、2分間隔で運行する路線の場合、5割の運行といっても4分間隔で、通常の2割の運行でも10分間隔だ。雪国の路線とは比較にならない本数であることが分かるだろう。一方で朝ラッシュ輸送は、輸送力が1割欠けただけでも大混乱に陥ってしまうのだから、除雪設備を整えたところで解決はしない問題なのである。
ここで思い出してほしいのが台風接近時の「計画運休」だ。JR西日本が2014年から行っている計画運休は、風速や雨量が規制値を超えて運転が継続できなくなった場合の駅間停車などの混乱を防ぐために、台風接近前から運転を休止する措置である。東京圏でも昨年の2度の台風上陸で一気に定着した。
実は降雪時の間引き運転も、1998年の大雪で東京の鉄道がマヒ状態になり、各所で駅間停車が発生した混乱を教訓に、積極的に行われるようになった経緯がある。間引き運転とは一部の列車を計画的に運休させることに他ならず、5割の間引き運転は2本に1本の計画運休であり、台風における計画運休は10割の間引き運転ということになる。間引き運転と計画運休は本質的に同じものである。