FacebookやTwitterから、YouTubeにInstagram、そしてTikTokまで––20世紀とは比べ物にならないほど、多様なメディアが人びとの生活に溶け込んでいます。ますます“メディア戦国時代”の様相を呈している2020年。どのメディアが廃れ、どのメディアが生き残るのでしょうか。2018年11月に『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』(幻冬舎)を刊行した明石ガクトさん(ソーシャルエンタメ動画のコンテンツスタジオ・ワンメディア代表)、2019年10月に『TikTok: 最強のSNSは中国から生まれる』(ダイヤモンド社)を上梓した黄未来さんが対談し、メディアの未来を語ります。

2020年代の「揺り戻し」現象を論じた前編に続き、中編ではTikTokからVTuberまで、最新トレンドの分析が語られました。(構成:小池真幸)
 

YouTubeの浸透は、“14年越し”だった

明石:「波を正しく読むのが大事」なんて言ってしまいましたが、じつはワンメディアは、波を読めずに負けてしまったことがあるんです。

:どういうことですか?

明石:YouTubeの波を読めませんでした。2014年の創業時は、YouTube事業でスタートしたんです。でも、なかなか市場ができあがらずに疲弊してしまい、撤退しました。

すると、UUUMやVAZのように、YouTubeを軸にした会社が頭角を現してきた。言ってしまえば、僕は時代や自分に負けたんです。

:そんな過去があったんですね。

明石:でも、最近はもう一度YouTubeにトライしていて。現在は、前澤友作さんのYou Tubeチャンネルをプロデュースしています。今後も、有名人にYouTubeチャンネルを開設してもらったり、企業のYouTubeアカウントを支援したりしていきます。(編集部注:この対談の数日後、ワンメディアとサイバーエージェントが共同で広告主企業のYouTubeチャンネルの開発・運用を行う「ブランデッドチャンネル」の提供が発表された)

:なぜ、このタイミングで再チャレンジを?

明石:以前YouTubeを諦めたときと比べ、ワンメディアのブランドも確固たるものになってきて、動画づくりのノウハウも蓄積されてきたからです。今までのYouTube業界の文脈と違った、まったく新しいYouTube動画にトライしてみたくなったんです。

:YouTube業界も、どんどん状況が変わっていますよね。最近は30代でも、スマホでYouTubeを観るようになっています。

明石:堀江さん(ホリエモン)も指摘していましたが、大人の視聴者が増えていますよね。すると、従来はYouTubeを軽視していたブランドや大企業も注目するようになり、産業がガッと変わっていく。

でも、急に変わったわけではありません。YouTubeなんて、スマホも何もない時代に生まれてから、14年も経っていますからね。

:14年も! そうか、意外と歴史があるんですね。

明石:社会は、変わり続けているんです。キャズムを越えると、急にガッと変わったように見えますが、いきなり沸点を超えて噴きこぼれるわけではありません。弱火でグツグツ煮ている期間が必ずあるので、そこを捉えないと波は読めないと思います。

黄未来(こう・みく)
1989年中国・西安市生まれ。6歳で来日。南方商人である父方、教育家系である母方より、 華僑的ビジネス及び華僑的教育の哲学を引き継ぐ。早稲田大学先進理工学部卒業後、2012年に三井物産に入社。国際貿易及び投資管理に6年半従事したのち、2018年秋より上海交通大学MBAに留学。現在は中国を本拠地として、オンラインサロン「中国トレンド情報局」も主宰。

TikTokはミームを生み出す

:他のSNSについても、ガクトさんの目にどう映っているのかお聞きしたいです。TikTokはどうですか?

明石:エンタメとして優れているし、多くの人が作品を投稿したくなる気持ちもよくわかります。一方で、個人投稿に最適化されているから、企業やブランドがどう入り込んでいくのかは読めませんね。インフルエンサーなど、特定の人が介在しないとビジネスは成立しづらいと思います。

:縦型というフォーマットについてはどう思いますか?

明石:フォーマットにはあまり興味がないですね。スマホの形に依存しているから、縦型になっているだけだと思います。たとえば、もしVRグラスが普及したら、目の前で踊っているように見えるスタイルになるでしょう。

むしろ僕は、TikTokが生み出すミーム、つまり“インターネットあるある”に興味があります。「●●ダンス」や、バチェラーの「#友永構文」といった、コンテンツの決まりごとのことです。いまのTikTokは、若い人が自然発生的にミームを生み出す場所としての力が非常に強い。少し前はYouTubeやTwitterがそうした機能を担っていましたが、最近は力が落ちています。

:Instagramはどう見ていますか?

明石:ここ数年、綺麗に整ったフィードの投稿よりも、“今”を共有するストーリーズが伸びてきましたよね。

でも、最近はユーザーがストーリーズにすら疲れてきていると思っていて。結果として、フィードに回帰しはじめている印象を受けます。ストーリーズで気軽に投稿するのに慣れた人たちが、カジュアルにフィードに投稿するようになっているんです。

:それは気がつきませんでした!

明石:先ほどお話ししたように、自分で発信するのではなく、趣味のアカウントをチェックするための場所として使う人も増えています。

これ、Facebookと同じ変化をたどっていると思っていて。かつてのFacebookは、近況報告や情報収集の場所でしたよね。でも、人が増えすぎて気軽に投稿できなくなり、みんな疲れてしまった。

だから最近は、プライベートなやりとりを行うメッセンジャー機能と、オンラインサロンや趣味サークルでの連絡に便利なグループ機能ばかり使われています。特定の機能を使うためのインフラに変わったんです。

明石ガクト(あかし・がくと)
2014年6月、新しい動画表現を追求するべくONE MEDIAを創業。独自の動画論をベースにSNSやLINE、OOHなどあらゆるデジタルスクリーンに対応する動画をプロデュース。2018年にNewsPicks Bookから自身初となる著書『動画2.0』を出版。その他、情報番組やバラエティ番組にもコメンテーターとして出演。

VTuberで勝つには、任天堂やバンダイと渡り合う覚悟が必要

:個人情報を出さずに発信するケースも増えましたよね。VTuberとか、サラリーマンがYouTubeで顔出しせずに書評する動画が流行っていたり。このあたりの動きはどう思いますか?

明石:VTuberも、マーケットとしては伸びていくと思います。ただ、参入障壁が低いのですぐにライバルも多くなって、勝ち続けるのは難しいんじゃないでしょうか。ブログが流行ったときと同じで、昔はブログで書評をする人がたくさんいましたが、いま残っている人はほとんどいません。

:あー、そうですね。いま匿名でブログで書評を書いて影響がある人って、ちきりんさんとかくらい。

明石:VTuberでヒットを生み出すためには、強いキャラクターIPをつくらなければならないんですね。で、強いキャラクターIPをつくるためには、おもしろいゲームやアニメというストーリーが必要になる。日本だと任天堂という最強の企業があるし、バンダイとかも典型例です。そうした会社と渡り合う覚悟で挑まないと、中長期的に人気を集めることはできないでしょう。

でも実際、そこに真摯に向き合ってる会社はほとんどなくて、今のVTuberはもう「ゆるキャラ」みたいになっちゃってる。「ゆるキャラ」で浮かぶのって、くまモンくらいじゃないですか。

:なるほど、しかもそれを個人でやるのが、本当に難しそうですね。では、Vtuberからは、初音ミクのような成功事例が出てくる可能性はないのでしょうか?

明石:初音ミクとVtuberにはですね、圧倒的に異なる点があるんです。初音ミクは、何万もの人がキャラクターを使って歌を届けています。つまり、中の人が何万人もいる「依り代」なんです。二次創作も中の人としてできるので、スケーラビリティも大きくなる。

一方、VTuberの魂には、ひとりしか入れないじゃないですか。二次創作をしようとしても、中の人にはなれないので、ファンアートをつくったりするしかない。ふつうの漫画やアニメのキャラクターと、本質的には同じなんです。

:すごくわかりやすい! そうかー、初音ミクのような戦い方は、いまのVTuberだとできないんですね。

続く