VR経験は『メディア経験』ではなく
脳も体も本物の体験だと認識
PTSD、人間関係、身体問題、環境問題、弱者への共感、慢性疼痛、スポーツトレーニング、教育、などなど。バーチャルリアリティー(VR)はこれほどまで多くのことに応用できるのか。本著『VRは脳をどう変えるか?仮想現実の心理学』の原題『オンデマンド経験-バーチャルリアリティーとは何か、それはどう機能して何ができるのか』が示すように、VRはいとも簡単に必要な「経験」をもたらし、さまざまな応用が可能なのだ。
一度経験すれば、VRに対する見方がまったく変わると言われたことはあるが、いまだにその経験はない。たかがゲームを面白くする、あるいは、映像メディアの延長だろうと思っていたのは浅はかだった。VRのことをまったく知らなさすぎたといえばそれまでだが、この本の内容には心底おどろいた。
著者、スタンフォード大学心理学教授のジェレミー・ベイレンソンによると、VR経験は「『メディア経験』ではなく『経験』そのもの」である。驚くべきことに、あくまで仮想空間での体験であっても、VRでの体験はあまりに強烈なために、脳も体も本物の体験だと認識してしまう。それを様々な目的に利用できるという。いくつかの事例を紹介しよう。