大詰め、そして判決を迎える
生活保護引き下げ訴訟
2012年12月、衆議院総選挙が行われ、自民党が安定多数となり、民主党から政権を奪還した。このとき、自民党は「日本を、取り戻す。」というキャッチフレーズで選挙戦に臨み、生活保護については「勤労者の所得水準、物価、年金とのバランスを踏まえ、生活保護の給付水準を10%引き下げます」と公約した。
この公約は、早くも2013年1月に“粛々と”実現に移されることとなった。予定されていた生活保護基準の見直しにあたり、厚労省は生活費分(生活扶助)を平均6.5%(最大10%)引き下げる方針を表明した。自民党の「10%」という引き下げ方針に対して、厚労省は引き下げ幅の若干のディスカウントに成功したことになるが、低所得層にとっての「平均6.5%」は、まさしく生存を削る重みがある。厚労省に感謝することはできない。
引き下げは2013年8月、2014年4月、2015年4月の3回にわたって段階的に実施された。影響を直接受けるのは、生活保護で暮らす当事者たちである。まず、全国で1万人以上の当事者が、行政に対する審査請求を行った。ついで、全国の29都道府県で国家賠償訴訟「いのちのとりで裁判」が提起された。集団訴訟の原告となった当事者は、現在、1022人に達する。他に、個人による本人訴訟もある。
その後も、生活保護では引き下げが続いている。2015年に暖房費補助(冬季加算)と家賃補助(住宅扶助)の引き下げ、2018年に生活費分の再度の引き下げ、および子どもの養育にかかわる加算の引き下げが実施されている。この他にも、目立ちにくく対象者が少ない引き下げや締め付けが、数多く実施されている。
厚労省は「引き下げ」ではなく「見直し」としており、一部には「引き上げ」「新規給付」となった地域や世帯も存在する。しかし、全体では総額が減少しており、明らかな引き下げである。行政が司法判断を待たずに引き下げを重ねることは、それ自体が司法軽視であると言わざるを得ない。
その間も、全国で「いのちのとりで裁判」が進行していた。最も進行の速い名古屋地裁では、本年1月27日に結審し、6月に判決が示される見通しだ。