パナソニック続・老衰危機#02
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家電に替わるパナソニックの“本業候補”となるはずだった自動車事業が、一転、身売りの危機に瀕している。テスラ向け電池事業の止血はできたものの、今度は車載機器事業が赤字を膨らませており、踏んだり蹴ったりの状況なのだ。特集「パナソニック 続・老衰危機」(全4回)の#02では、八方塞がりの車載機器事業の「有望身売り先」に迫った。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子)

パナソニックとホンダの間に
隙間風が吹いた裏事情

「もはやパナソニックの自動車部隊はトヨタ(自動車)さんが優先ですから。ホンダさんは二番手です」。パナソニック技術者がそうつぶやくのを聞いて、ホンダ幹部は怒りを通り越して複雑な気持ちになった。

 パナソニックで自動車事業(車載電池事業と車載機器事業の二つから成る)を展開するオートモーティブ社(AM社)とホンダは近しい関係にある。実際に、AM社にはホンダ営業統括部という専任組織が設けられ、営業マン約60人が詰めている。2009年にパナソニックが買収した旧三洋電機とホンダが車載電池を共同開発していた経緯があり、蜜月関係が構築されていったようだ。

 そんな両社に隙間風が吹くのは、昨今の事情を考えれば無理からぬ話だ。

 まず、昨年1月にトヨタとパナソニックが角形電池分野における合弁会社の設立に合意した。合弁会社への出資比率はトヨタ51%に対してパナソニック49%。当時、トヨタはこの新会社にホンダを招き入れようとしたが、トヨタ主導のスキームを理由にホンダは資本参加を断っている。パナソニック製電池の協業に関しては、トヨタよりも自社が優先だと思っていたホンダからすれば、不義理をされたようで面白い話のはずがない。

 そして、今度はホンダ側からの一手がパナソニックを追い詰めることになりそうだ。一手とは、昨年10月に決まった日立製作所とホンダによる傘下の部品会社の統合のことである。

 両社の部品会社について簡単に説明しておくと、日立傘下の日立オートモティブシステムズは日産・仏ルノー向けに強く、ホンダ傘下のケーヒン、ショーワ、日信工業の3社はホンダ向けに強い。新会社への日立の出資比率は66.6%であり、事実上は日立グループによる“ホンダ系部品の買収”だと言える。

 新会社の誕生により、「ケーヒンなどホンダ系部品メーカーと勝負していたパナソニックは、新会社に仕事を奪われたり、新会社と天秤にかけられることで値下げ圧力がかかったりする」(ホンダ幹部)。要するに、ホンダ向けの商売が日立グループに奪われることなどにより、パナソニックの車載機器事業の先細りが懸念されているのだ。

 パナソニックにとって、トヨタ向けとホンダ向けの商売は車載機器事業の「両輪」である。将来的に、ホンダ向けビジネスの見通しが厳しい以上、パナソニックは、「トヨタ依存」の方針へ傾斜するしかない。飯食い上げの危機的状況だからこそ、冒頭のパナソニック技術者は、ホンダの目の前で「トヨタさんが優先」と言ってのけたのである。

 そして、パナソニックの試練はこの程度にとどまらない。日立・ホンダ連合の誕生は、国内自動車業界全体で行われようとしている “リストラ劇”の序章に過ぎないからだ。