パナソニック続・老衰危機#01Photo:REUTERS/AFLO

パナソニックの“本流中の本流”だったテレビ事業で抜本改革が断行されることになりそうだ。すでに、津賀一宏・パナソニック社長は「許さない」と断言しており、協業先の選定が粛々と進められている。候補となる企業はどこか。また、テレビを含む家電の国内工場のうち、統廃合の対象となるのはどこなのか。特集「パナソニック 続・老衰危機」(全4回)の#01では、パナソニックの“顔”でありながら、業績が振るわない家電部門に不可欠な改革策を探った。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「テレビは許さない」津賀社長
いよいよ事業解体が始まる

「もはやテレビは家電の王様ではない。いまだにテレビの自社開発、自社生産にこだわっていること自体がナンセンス。津賀さん(一宏・パナソニック社長)の判断は遅いくらいだ」。あるパナソニックの元役員はこう吐き捨てる。

 昨年末、津賀社長はダイヤモンド編集部の取材に対し、「テレビ事業だけは許さない」と断言したばかりだ。ついに、津賀社長自らがテレビ事業の“解体”に乗り出した(参考記事:特集「パナソニック 老衰危機」#02 パナソニック津賀社長激白「もう許さない。モグラ叩きはおしまい」)。

 テレビを含む家電事業を展開するアプライアンス(AP)社の業績は振るわない。2月3日、パナソニックは2020年3月期第3四半期の決算を発表するが、これまでの予想通りならば、AP社の通期の営業利益率は前期の3.1%から2.8%まで落ち込む見込みである。その低収益の元凶となっているのが、他ならぬテレビ事業だ。

 目下のところ、テレビの世界市況は最悪の状況にある。18~19年に中国勢がパネル工場の大投資を行ったため、供給過剰によるパネル価格の下落に引きずられてテレビ本体の価格まで下落してしまった。米中貿易摩擦により、米国市場に投入されるはずだった中国メーカーのテレビがアジアや欧州に流出したこともまた、テレビ価格の下落を招いている。

 もっとも、冒頭の元役員が苦言を呈しているのは、テレビ事業のもっと根本的な問題を見据えているからだ。

 市況が回復したとしても、テレビは技術的に成熟してきており、パナソニックが競争優位を保ち続けるのが難しい。足元では底堅い上位機種とて、いつまで利益体質を維持できるのか分からないのだ。そもそも、若年層を中心にユーザーの視聴形態はテレビからスマートフォンに移行しており、かつてのような“お茶の間の主役”としてのテレビの役割は期待できない。

 おまけに、パナソニックはかなり以前にテレビ向けの液晶パネルの自社生産を取りやめている。「テレビの製造コストの50~55%を占める」(競合電機メーカー幹部)パネルを外部調達しているならば、もはやテレビの自社生産にこだわる必要はないはずだ。

 AP社の社長を務める品田正弘常務執行役員もその事実を重く受け止めているようで、「開発費の削減と製造拠点の整理についてはある程度踏み込んだ考え方をし、固定費をミニマイズしていく」とテレビ事業の構造改革に向けた決意を語っている。

 構造改革の大前提となるのは、他社との協業である。昨年11月に行われたIR Day(投資家向け説明会)でも、パナソニックに代わってテレビの開発や製造を担ってくれる協業先の選定を進める方針が示されている。

 果たして、“結婚の相手”として候補に挙がるのはどの企業なのか。