くら寿司代表取締役社長田中邦彦氏
Photo by Koyo Yamamoto

店のコンセプトから料理の1皿に至るまで、外食産業の経営者は消費者の心をつかむスペシャリストだ。個性派ぞろいの「外食王」たちは何を考えているのか。連載「外食王の野望」で取り上げる外食トップのインタビューを通じ、そのノウハウをおいしくいただこう。今回はくら寿司の田中邦彦社長。「回転ずし界のユニクロ」を目指すと意気込む真意に迫った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)

年間3000品試作し商品開発力に自信
サイドメニュー強化は需要に応えた結果

――足元の事業環境をどのように捉えていますか。

 2019年は天候不順や台風などの自然災害の影響が大きく、不安定な年でした。加えて、われわれはアルバイトによるSNSへの不適切な投稿事件もあり、散々な1年でした。

 20年も厳しさが増しています。国民の可処分所得は増えておらず、財布のひもが固い。外食をする余裕も限られています。われわれ企業側の視点で言えば、人件費の高騰はもちろん、原材料費も10年前に比べて20~30%程度上昇しており、予断を許しません。

――サイドメニューを強化しています。狙いはなんでしょうか。

 アナリストをはじめとした外部の方から、「原価対策でやっている」という見方をされますが、非常に心外です。全くそのような意図はありません。

 われわれは年間3000品もの試作を行い、業界で一番の商品開発力があると自負しています。店舗にいらっしゃる老若男女の方々の需要に応えた結果として、サイドメニューが伸びているのです。

 高級スイーツブランド「KURA ROYAL(クラロワイヤル)」のヒットもあり、現在売り上げに占めるサイドメニューの比率は30%程度まで上昇しています。

世界展開を見据えて社名を変更
株の配当だけで生活する社員もいる

――19年に社名をくらコーポレーションからくら寿司に変更しました。

 かつてのすし屋といえば、職人肌で無愛想な店員が多かった。そこで「コーポレーション」と名付けることで、会社・組織であるとの認識を内外に強く持たせ、それまでのイメージを払拭したかった。

 ただ、グローバルに事業を展開するに当たり、くらコーポレーションでは何をやっている会社なのか分からない。だからグローバルで認知度の高い「Sushi」を社名に入れようと考えたのです。

――米国ではナスダックに上場しました。海外で外食企業が上場するのは珍しいことです。

 上場した目的は三つ。資金の確保と信用の獲得、そして全員経営の実現のためです。

 初めの二つの目的については当然のことですが、三つ目の目的の実現のため、従業員に会社の株を持たせることが何よりも大切。個人が頑張れば会社も繁栄し、従業員へのリターンも増えるという好循環につながっていく。こうした環境をつくっていきたい。

 だから社員には「給与だけでなく、株でも稼げ」と言っています。中には、毎月の給与を銀行口座から下ろさずに、株の配当だけで生活している従業員もいると聞いています。