「生後6ヵ月から12ヵ月」が重要

 だが、この状態は長くは続かない。1歳の誕生日を迎える頃、赤ちゃんはもはや世界中のあらゆる言語の音を聞きわけられなくなっていることを、クールは発見した。 

 赤ちゃんが区別できるのは、過去6ヵ月間に触れたことのある言語の音だけになる。

 生後6ヵ月から12ヵ月のあいだにrake(熊手)とlake(湖)という二つの単語を聞かされなかった日本の赤ちゃんは、1歳になる頃にはrとlの発音の違いを聞きわけられなくなる。

 とはいえ、例外はある。訓練すれば、成人はほかの言語の発音であっても聞きわけられるようになるのだ。

 だが一般的に、その機会には期限があるようで、その窓はあっという間に閉じてしまう。ほかの言語を聞きわける窓の扉は、生後6ヵ月で閉まりはじめる。そして生後12ヵ月を迎える頃、赤ちゃんの脳は、その後の人生でほかの言語を習得するか否かの決断をすでにくだしているのだ。

 ほかの言語に対して扉を開けたままにしておく手法はひとつしかない。

 交流を通じて言葉を伝えるのだ。本物の人間が部屋に入っていき、子どもに向かって直接、その言語を話さなければならないのだ。

 子どもの脳がこの交流を認知すれば、脳内のニューロンがその第二言語を音素などを含めてすべて記録しはじめる。こうした認知作業をおこなうには、脳は生身の人間から情報満載の刺激を得て、その刺激を相互にやりとりしなければならない。

(本原稿は『100万人が信頼した脳科学者の絶対に賢い子になる子育てバイブル』ジョン・メディナ著、栗木さつき訳の抜粋です)