医療に関わる被害は
身体的にも経済的にも救済困難

 このような消費者による相談は、がん医療だけではない。消費者庁が毎年出版する消費者白書によると、相談窓口に寄せられた被害には医療サービス、美容サービス、健康食品、化粧品、歯科治療が毎年のように上位にくる。

国民生活センターサイトのトップページ。消費者被害に関する注意喚起情報が発表されている
国民生活センターサイトのトップページ。消費者被害に関する注意喚起情報が発表されている

 消費生活アドバイザー(元内閣府消費者委員会委員)の唯根(ゆいね)妙子さんは20年間、消費者相談を受けてきて、こう話す。「消費者被害は新聞の折り込み広告やインターネット広告がきっかけとなりやすい。特に、医療や美容に関する内容が専門的なため、記載事項から悪質な会社や不適切な情報を見分けることはとても難しいといえます。しかし、被害が起こったとき、身体的にも経済的にも救済が難しいという特徴があります」

 消費生活相談データベースPIO(パイオ)-NETによると、特に美容医療に関する相談件数は近年、毎年2000件前後にのぼる。フェイスリフト、美容(プチ)整形(目・鼻・口・美白・豊胸など)、包茎治療、レーザー脱毛、脂肪融解・吸引は被害が多い。

 歯科はインプラントや矯正、ホワイトニングなどの審美歯科で、がん治療では免疫療法や温熱療法、このほか、眼科のレーシック治療、白内障手術、血液クレンジング療法、ニンニク注射、オゾン療法、アンチエイジング等で被害の訴えが起きている。

 これらの被害情報は、国民生活センターで詳細が掲示されている。

 具体的には、こんな手口や報告がある。

▽医師が患者に考える間も与えず、診察日当日に手術を迫る。
▽裸で手術台に載っているとき、「医療は個別性が高い。あなたの場合は、こういう治療も必要になる」と治療の種類が増える。
▽術後、腫れや痛みがひどかったが連絡が取れず、別の病院へ飛び込んだ。
▽効果が出るまでには○カ月かかると、繰り返し来院させる。
▽治療を繰り返した結果、あなたには目に見える効果は出にくかったと言われる、など。

 だが、いずれも医療行為を提供するときは本人の同意のもとで行われるため、弁護士を立てて争うことは可能だが難しい。手術を受けるときは同意書に署名することになっているが、医療機関(病院・クリニック)によっては「施術後は異議申し立てをしない」と記載されていることがあるともいう。

 特に、自由に医療サービスの提供価格を設定できる「自由診療」では治療費が高額に設定され、医学的な合理性や必要性に乏しくても、患者へのインフォームドコンセント(医師による患者への説明と、納得した合意)が不足したまま、強引に患者から形式的な承諾を取って進めていることもあるという。

 自由診療とは、(1)病気以外で医療を受けるとき(出産・健康診断・予防接種・美容整形など)、(2)歯科の詰め物などで公的医療保険適用以外の材質を用いるとき、(3)厚労省が承認していない治療法や医療機器などを用いるとき――の診療の形で、公的医療保険は使えない。厚労省が承認していない医療とは、その安全性や効果について正式には認めていないという意味。自由診療を受けると、全額、患者負担になる。

 一方、公的医療保険の下で医療を提供する保険医療機関や薬局では全国どこでも同一に価格が設定され、支払う人の年齢区分によって自己負担割合は異なる。また、日本では安全性と効果の科学的根拠がそろえば、ほぼ必ずその治療は公的医療保険に適用されることを知っておいてほしい。

 宮城綜合法律事務所の宮城朗弁護士はこう指摘する。「違法・不適正な広告によって消費者被害が発生する根本的な要因は、自費診療では利益率が非常に高いことです。そのため、一部の医療機関側の運営が過度に商業ベースになり利潤追求に走っています」