独特の食文化や賑やかな街並みが受け、アジアからの観光客に絶大な人気を誇る大阪。ここ数年は在阪百貨店もその恩恵を受け、右肩下がりの業界において圧倒的な存在感を放ってきたが、ここへ来て陰りが見えているようだ。(清談社 松嶋千春)
在阪百貨店の
インバウンドバブルが下火に
日本百貨店協会が1月22日に発表した「令和元年12月全国百貨店売上高概況」によれば、2019年10月~2019年12月の3カ月間の全国百貨店の売上高は、消費増税前の駆け込み需要の反動減により、全ての地域で足並みをそろえて3カ月連続マイナスとなった。
増税前の売り上げデータに注目してみると、大阪の百貨店は2019年2月~9月の8カ月連続プラスと、他の地域が振るわないなか、堅調に推移していた(全国百貨店売上高概況)。「大阪の百貨店の売り上げを後押ししていたのは、インバウンド消費にほかなりません」と経済ジャーナリストの磯山友幸氏は言う。
大阪観光局の推計値によれば、2018年度の来阪外国人旅行者数は約1141万人。2018年度の訪日外客数は約3119万人だから、全体の3割以上が大阪を訪れた計算になる。高島屋(「高」の文字は正確には“はしご高”)の大阪店が2018年2月期売上高で同日本橋店を抑え66年ぶりに1位に返り咲くなど、2018年は大阪の百貨店の好調ぶりを象徴する年だった。ところが、2019年夏から、インバウンドを取り巻く状況は変調をきたしている。
「1人あたりの消費額が低いとはいえ、日韓関係の冷え込みにより韓国人観光客の数が約3分の1に落ち込んだ影響は大きいでしょう。また、来阪人数でもっとも多い中国人観光客については、転売目的の購入品に対する税関の規制が厳しくなったことで爆買いが下火傾向になってきています」(磯山氏、以下同)
日本政府観光局(JNTO)が発表した速報値では、2019年の訪日外国人の数は3188万人。今年は東京五輪に乗じて年間4000万人という目標を掲げているが、このペースだと到達できるかどうか微妙な状況だ。
「外国人観光客の数は頭打ちになっていますし、2度3度と来日しているリピーターのあいだでは、より日本らしさを感じられる、行ったことのない土地、たとえば岐阜県の白川郷などの田舎が人気です。外国人の観光における買い物のウェートは小さくなりはじめているうえに、関西圏では宿泊施設が供給過剰気味です。東京五輪の特需やインバウンド需要に頼りきりでは厳しいでしょうね」