「中国の夢」実現で剣ヶ峰の年
成長減速で党内闘争の引き金にも?

 2020年は習近平体制にとって剣ヶ峰の年だ。

 最も重要と考えていることは2012年に習近平国家主席(共産党総書記)が掲げた「中国の夢」の実現、つまり、かつてはシルクロードまでを支配下においた「中華民族の偉大なる復興」を成し遂げることであり、2020年はその一環として2010年比GDP(国民総生産)の倍増を達成することだろう。

 ところが米中貿易戦争が長引き、対米貿易の縮小で米国向け製品を生産してきた内外の企業の国外移転が進んだのに加えて、今回の新型コロナウイルスの感染拡大は大きな成長阻害要因となってきた。

 習近平政権の公約実現には計算上2020年に5.6%の成長を必要とするが、これも怪しくなってきた。

 高い経済成長の達成が共産党統治の正統性の基盤ともみなされており、公約の実現が危ういことは党内の権力闘争の引き金ともなりかねない。

 3月5日に開幕予定だった全国人民代表者大会(全人代)もどうやら延期される見通しだ。感染拡大が収まらない状況では、地方から多数の代表を北京に集めるのは難しいだろうし、習近平指導部にとって、さらに深刻なのは、新型コロナウイルスの感染拡大が共産党の統治体制の欠陥と直接結びついているのではないかという見方が国内外で高まっていることだ。

大幅に遅れた習氏の「指示」
統治体制の欠陥を露呈

 感染の拡大を初期段階でなぜ防止できなかったのか?

 その最大の理由として、共産党一党独裁体制の下で、言論の自由が著しく制約されていることや地方政府の官僚主義的対応と透明性のなさ、さらには共産党中央に諮らなければ行動できないシステムが持つ欠陥などが指摘されている。

 武漢市の海鮮市場に赴いた地元民から肺炎の症状が出て、新型コロナウイルスの存在が疑われ始めたのは、昨年12月初旬から中旬にかけてだった。

 のちに自身も感染し死去した武漢市中心病院の李文亮医師は、すでに昨年12月30日の時点で異例症状の肺炎患者が出ていることを友人たちに警告していた。

 ところが専門的知見を持つ者ですら新型肺炎患者の存在や問題点を口にすることは政治的に禁止され、李医師は警察により二度とこのようなことは行わないよう「訓戒文」に署名押印を強要されたという。

 その後、ウイルス感染は拡大し、1月中旬にかけて患者の数が増えるに従い空港や鉄道の駅で体温測定などの措置が取られ始めた。しかしながら、この新型ウイルス感染症による肺炎が伝染病と認定されて本格的な防疫措置が開始されるのは1月20日に習近平総書記が重要指示を出してようやくだったという。

 伝染病の拡大防止に最も重要なはずだった1カ月の初動期間が無為に過ぎた。