安倍政権の成長戦略の柱が、新型ウイルスで行き詰まり新型コロナウイルス感染症専門家会議で発言する首相の安倍晋三(左端)。新型コロナウイルス問題では、これまで見えなかった日本の致命的な弱点が浮き彫りになった Photo:JIJI

「不規則な発言をしたことをおわびする」。2月17日午前の衆院予算委員会の集中審議は異例の首相、安倍晋三の陳謝から始まった。言うまでもなく自民党が集中審議に応じざるを得なかった原因をつくったのが安倍自身だったからだ。前週、12日の衆院予算委で質問を終えた立憲民主党幹事長代行の辻元清美に放った安倍のやじにあった。

「意味のない質問だよ」

 安倍はこれまでも国会答弁で窮地に陥ると、しばしば閣僚席からやじを飛ばして審議を混乱させてきた。今回も野党側が集中砲火を浴びせている首相主催の「桜を見る会」を巡る“公私混同”問題。中でもホテルニューオータニで開かれた「前夜祭」の説明は、誰が聞いても安倍の答弁は破綻している。自民党内からも安倍に対する批判が表面化し始めた。安倍と初当選同期のベテラン議員ですら眉をひそめた。

「安倍内閣は下品な政権に成り下がった」

 与党公明党代表の山口那津男もさすがに苦言を呈さざるを得なくなった。

「国会の議論の中で挑発的な言動があったとしても、冷静に真摯に対応することを一貫して心掛けていきたい」

「安倍1強」を支えた構図は野党の弱体化が最大の要因だが、同時に自民党、公明党内から不満が表面化しないことにあった。その1強の内部構造に変化が生じたとみることも可能だ。ただ、安倍はなお衆院解散権を握る。1月12日のNHKのインタビューでも従来の考えを繰り返した。

「(解散は)本当に考えていない。頭の片隅にもない」

 だが、同時に必ずこの一言も忘れない。

「解散すべき時が来たと思えば、解散することにちゅうちょはない」