フリー・キャッシュ・フローを増やす方法

 アップルのフリー・キャッシュ・フローが大きい要因は2つあります。

 ひとつは当期純利益の金額がそもそも大きいという点です。595億3100万ドルもの当期純利益がありますので、それだけ営業キャッシュ・フローが大きいのもうなずけます。

 もうひとつは投資キャッシュ・フローがプラスになっている点です。設備投資やM&Aなどに資金を投じ続けるのが企業の通常の姿なので、投資キャッシュ・フローはマイナスになるのが普通です。

 逆に、プラスになっている企業は、持っている資産の切り売りで事業縮小をしている可能性があります。

 アップルはプラスになっているので、何かしらの事業縮小を行っているのかと思いきや、実は中身を見てみると、単に持っている有価証券の売却(Proceeds from sales of marketable securities)や償還(Proceeds from maturities of marketable securities)でキャッシュが増えているだけなのです(「償還」とは、社債など満期が定められている有価証券を保有している場合において、満期が到来して投資した元金が戻ってくることを意味します)。

 なお、純粋な事業投資といえる有形固定資産の取得による支出(Payments for acquisition of property, plant and equipment)は133億1300万ドルと、前の年より増加していますので、決して投資の手を緩めているわけではありません。

 さらに興味深いのが、アップルのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)です。キャッシュ・コンバージョン・サイクルとは、商品や原材料を仕入れてから販売して代金が手元に入るまでの平均期間を示したもので、営業キャッシュ・フローを増加させる要因となるものです。下記のイメージ画像を見てください。

アップルは「10日分の在庫」しか持たない、だから儲かる

 キャッシュ・コンバージョン・サイクルが短ければ短いほど、現金を回収するサイクルが早く、手元のキャッシュが潤沢になります。

 キャッシュ・コンバージョン・サイクルは、売上債権回転期間と棚卸資産回転期間の合計から仕入債務回転期間を差し引いた日数です。詳しく見ていきましょう。