1月11日、12日に開催された東京eスポーツフェスタの主催者挨拶の一幕だ。記者もその場にいたが、小池知事の挨拶後、ゲーム愛好者ばかりの会場では、「内心思っていてもこの場で言っちゃいけない」「主催者が言っちゃ、お終いよ」などと嘆く声があちらこちらで聞かれた。本質的な是非はさておき、その場に相応しくない挨拶だったことは確か。ゲーム業界関係者がよく言う「ゲーム業界の光と影」が分かりやすく現れた形だ。

「光」はゲームによる経済・地域の活性化や娯楽の提供などプラスの側面、「影」はゲーム障害や教育上の悪影響など負の側面を指す。

 テレビゲームのネイティブ世代が高齢化してゲームに対する世間の理解は進んできたとはいえ、世代、地域、業界で温度差はある。例えば、香川県議会ではネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)が制定に向けて議論されている。御年67歳の小池知事の不用意な発言は、影の部分を意識したものだったのかもしれない。

 日本eスポーツ連合の検討会でもこれら影の部分は議論の俎上に上り、検討会の最終回では、「eスポーツが持つ教育的価値の探索とそれを支えるエビデンスの取得」は継続検討事項となった。

 ゲームに対する世間の意識変革以外にも、課題は少なくない。ファンを獲得できるゲームタイトルの選定、プロeスポーツプレイヤーの経済的地位向上、競技施設の整備など。中でもゲームのIP利用・許諾に関するガイドライン策定は、今後、全国各地でeスポーツ大会を活発に開催する上で喫緊の課題だ。

 検討会には、委託した経済産業省に加え、内閣府、消費者庁、スポーツ庁がオブザーバーとして参加。委員構成自体も、ゲーム関連会社幹部、プロeスポーツのチーム代表、プロeスポーツプレイヤー、医療関係者、地方自治体職員、弁護士、メディア関係者などと多岐に渡っていた。

 乗り越えるべき課題は山積しているが、メンバーが一丸となって取り組めば、「産業と呼べない現状の市場規模」から“ゲームチェンジ”が実現するかもしれない。