観光客数の増加に
検疫官の数が追いついていない

 2018年の訪日外国人観光客は3119万人、内訳は中国が838万人、韓国が753万人、台湾は475万人。この3カ国のみで約66%を占めてしまっているのだ。イギリスやフランスなどの欧州からにいたっては、120万人程度しか来ていない。

 では、観光大国であるタイはどうか。観光スポーツ省によると、2018年にタイを訪れた外国人観光客は、3827万人。内訳としてはやはり中国人観光客が1054万人と圧倒的に多いが、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどのASEAN諸国からも1028万人、日本から165万人、韓国から179万人、欧州からも676万人もの人々がやってきているのだ。

 ここまで言えばもうおわかりだろう。日本が「中韓台の観光地」というポジションを抜け切れていないのに対して、タイは「世界の観光地」になっている。つまり、投資家がリスクヘッジするために、投資先を分散させるの同じ理屈で、観光客に「多様性」を持たせていることで、さまざまなリスクが発生しても対応ができるというわけなのだ。

 日本も「観光立国」を掲げているのだから、ここを目指していくべきである。

 今回の新型コロナの影響もあって、日本国内では「インバウンド」に対してネガティブな論調が増えてきた。曰く、インバウンド景気だと浮かれて中国人観光客をたくさん呼んだことで、国内の感染拡大を招いた。曰く、外国籍のクルーズ船を迎え入れるからこんな面倒なことに巻き込まれるのだ――。

 しかし、一方で「観光」というものをナメていたから「災い」を防げなかったという側面もある。たとえば今回、国際社会でも批判が持ち上がっている「日本の検疫体制」がわかりやすい。

 クルーズ船の乗客だけではなく、医療従事者、検疫官、果ては厚労省の職員にまで感染を広げてしまったことに対して、政府は「外国船籍を相手に法的根拠もないなかで、できることが限られていた」「狭い船内という前例のない状況で、対応マニュアルなどが整備されていなかった」などなど、さまざまな言い訳をしているが、その中のひとつが「マンパワーが足りない」ということがある。

 厚労省の資料によれば、2000年の検疫所の職員数は342人。02年にSARSが発生して体制強化が叫ばれてから年々増えて、13年には910人、15年には966人まで拡大された。そして、厚生労働省健康局結核感染症課の「感染対策に係る課題と課題への対応」によれば、「水際対策の強化」をうたって検疫所職員を計画的に増員し、19年度には1158人と、00年の3倍以上まで強化されている。

 素晴らしいじゃないかと思うかもしれないが、日本がさらされているリスクに見合っているのかというと、そうとも言い難いのだ。

 国土交通省によれば、SARSが蔓延した2002年、訪日外国人観光客はわずか524万人。では、あれから16年を経てどうなったかというと3119万人。6倍にはねあがっているのだ。