介護や介助を必要とする人々にとって、感染症のリスクとは、まず自分自身が感染し、重症化することにある。しかし、それだけではない。介護者・介助者が感染してしまうと、業務に就くことができなくなる。感染したり発症したりした状態で、ハイリスクの利用者をケアするわけにはいかないだろう。しかし「感染のため業務に就けない」ということは、利用者にとって介護や介助が途切れたりなくなったりすることを意味する。
「私のお願いしている介護事業所では、『家族介護の覚悟を』と呼びかけています。でも今の私は、子どもが巣立って1人暮らしなので、どうしようもありません」(Kさん)
Kさんは、これから「籠城生活に備える」という。公共交通機関を利用して移動する介助者は、いつ勤務できなくなってもおかしくない。買い物や調理が不可能になる事態に備えて、スーパーのタイムセールの弁当をいくつか買っておくつもりだという。冷蔵・冷凍しておけば、すぐ食べられる何かがある状態を、数日間は維持できるだろう。
「影響はない」と明るく語る
介護事業所の日常の備えとは
介護事業者側の事情は、地域や対象や事業者によって大きく異なる。
東京都内で居宅介護の介護事業所を運営するYさん(女性・40代)は、「利用者さんたちもヘルパーさんたちも比較的若いせいか、今のところ、影響は何もありません」という。
Yさんの事業所のヘルパーの主力は、30代と40代だ。背景の1つは、人工呼吸器装着者などに対する、専門性とスキルを求められるケアに特化していることだ。利用者は、就学前の子どもから70代まで広く分布しており、おおむね半数が65歳以上である。その人々は、高齢者かつ重度障害者である。ハイリスク群の中のハイリスク群だ。