子どもの時からの難病を持つAさん(女性・40代)は、生活保護のもとで毎日24時間の介助を受けながら、1人暮らしをしている。

 今月半ば、Aさんは風邪を引いた。新型肺炎の感染が拡大し始め、マスクがほぼ入手できなくなっていた時期だった。そして、実質的な医療拒否に遭った。

「37.8度の発熱があり、咳がありました。まず保健所に電話をかけて問い合わせたのですが、『だるさや食欲減退がないので、対象外』ということでした」(Aさん)

基礎疾患があるため
厄介払いされた可能性

 基礎疾患を抱えているAさんは、風邪が気管支炎に発展しただけで、生命に関わる事態となる。そういうときの頼みの綱は、近隣の大学病院への入院だ。Aさんは外来窓口に電話したが、その日は満床で入院は無理だと告げられた。外来には、かかりつけ医院の紹介状が必要であるという。もちろん、かかりつけ医院は紹介状を用意した。

「でも受付からは、診察できるかどうかの判断のために、まず紹介状の原本を持ってきてほしいと言われたんです。『FAXではダメ』ということでした」(Aさん)

 困り果てたAさんは、結局、普段の電動車椅子ごと母親の運転する自動車に乗せてもらい、実家の近くにある医院に行った。結果的にAさんの風邪は、気管支炎や肺炎に進展せず、風邪のまま軽快した。しかし気になるのは、頼みの綱だった大学病院の受付窓口の対応だ。

「タイミングがタイミングでしたし、基礎疾患があると言ったものですから、『なるべく病院に来ないでほしい』と厄介払いされてしまったのかもしれませんね」(Aさん)

 Aさんが、もしもインフルエンザやコロナウイルス肺炎に罹っていたら、大学病院の受付の指示の通り、かかりつけ医院に紹介状を取りに行ったり、大学病院に持っていったりするだけで、他の人に感染させるリスクを高めることになったかもしれない。