新型肺炎新型肺炎が日本経済に与える影響とは? Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

新型肺炎による経済活動への影響が懸念されている。しかし、仮に中国経済が新型肺炎によって大混乱したとしても、日本経済への影響はリーマンショックより小さいだろう。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

中国経済のリスクシナリオは
新型肺炎に起因する信用危機

 本稿は、新型肺炎の影響で中国経済が大混乱する、というリスクシナリオについて考えるものである。筆者の予想としてのメインシナリオを語るものではないので、まずはその点をご理解いただきたい。

 中国の新型肺炎は、必死の封じ込めが奏功して流行の広がる速度が遅くなってきているようにも見える。しかし、仮に今後も当分の間流行がおさまらず、移動制限が続き、経済活動に甚大な支障が出続ける場合について考えてみよう。

 ちなみに、日本国内で新型肺炎が爆発的に流行した場合については、本稿は考えないこととする。その場合に何が起きるのかは、本当に予測不能だからである。

 中国国内の生産活動が長期にわたって止まると、売り上げが激減する企業が資金繰りに窮するはずだ。そうした企業の倒産が相次ぐと、連鎖倒産が発生するだろうし、金融機関が与信(貸出等)に慎重になるため、比較的健全な企業も融資が受けられずに倒産する事態になりかねない。

 最悪なのは、金融機関の中に倒産の可能性のある所が続発することである。そうなると、金融機関相互の資金貸借が止まり、資金繰りのつかない金融機関が出てくる可能性がある。あるいは預金者が預金の引き出しに殺到する「取り付け騒ぎ」が起きるかもしれない。

 そうなると、すべての金融機関が「貸出を絞り、金庫に札束を積み上げておかないと不安だ」と考えるようになる。金融収縮である。