金融機関が倒産したり、資金繰りに窮したり、自分の資金繰りを心配して融資を引き上げたりすると、借り手が返済を迫られ、資金繰りに窮することになりかねない。

「他の金融機関から借りれば良い」と考える読者がいるかもしれないが、それは容易ではない。そもそも金融収縮の場合には、他の金融機関も融資に慎重であろうし、仮に融資に前向きな金融機関があったとしても、簡単な話ではない。

 金融機関は、既存の取引先についてはよく知っているので気軽に融資をするが、新規取引先への融資に際しては返済能力などを慎重に調べるため、融資の決定までに長い時間を要するからである。

 倒産増→金融機関の損失増→金融機関の倒産増→更なる倒産増といった悪循環が発生すると、金融が目詰まりしてしまう。「金融は経済の血液」といわれるが、「普段は気にしていないが止まると大変だ」という点で血液と金融は似ているのだ。

リーマンショックは
米国の景気悪化と金融収縮

 リーマンショックの時、米国で起きたのは、まさに倒産の増加と金融収縮だった。倒産の増加による不況は、米国の日本からの輸入を減らし、日本の輸出企業の生産を激減させ、雇用も激減させた。

 米国の金融収縮は、「世界中の取引で使われている基軸通貨である米ドルが、世界中から引き揚げられてしまう」ことにつながり、世界中の貿易や投資に悪影響が生じた。特に、対外債務を抱えている途上国の中には大きな打撃を被ったところも多かった。その結果、日本の途上国向け輸出も減少した。

 日本に関して言えば、ドル安も痛手であった。米国の景気悪化により米国の金融が緩和されると、日米金利差が縮小したので、日本円を米ドルに替えて米国債を購入する投資家が減り、ドルの需要が減り、ドルが安くなり、輸出企業へのダブルパンチとなったのである。