海外では、アイスクリームの賞味期限を2年間とする国が多くみられ、国内でもアイスクリームを自社で製造・販売しているシャトレーゼのように、賞味期限を設定している会社はあります。

 それを考えると、一見この決定は消費者重視の立場からのものに思えますが、それに対して異論が噴出しているのは、なぜでしょうか。

 安全性の立場からの明治の決定に異論が出る一番の理由は、大企業が今対応を強く求められているSDGs(Sustainable Development Goals/国連の持続可能な開発目標)の中の強い関心テーマである、食品ロス削減に逆行する恐れがあるからです。

日本独自の「3分の1ルール」
食品ロス解消に逆行する可能性

 そもそも日本は、食品ロスが多い国だといわれています。アメリカなどと比べて消費者の潔癖性が強く、たとえばパッケージの一部がへこんだだけでその商品が買われないことも普通にあります。その結果、「ワケあり品」として安くしないと売れないというような日本特有の流通環境があります。

 そうした中で、日本独自の「3分の1ルール」という業界自主ルールが生まれました。メーカーや卸は、製造されてから賞味期限までの期間の3分の1が過ぎるまでに、商品を小売店に納品しなければいけない。そして小売店は、賞味期限までの期間が残り3分の1を切ったら、棚から商品を撤去し消費者に販売してはいけない。このようにして、メーカーと流通による自主廃棄を促すルールです。

 これまでなかった賞味期限が設定されれば、明治のアイスクリームに関しては流通がそれまでやらなくてよかった廃棄の判断をしなければいけなくなる。そうなれば当然、廃棄ロスが発生する。それが時代に逆行するのではないか、という疑問です。