そもそも、日本の3分の1ルールが厳しすぎるというのがSDGsにおける論点です。日本と比較して、アメリカは2分の1、イタリアやフランスは3分の2、イギリスは4分の3という状況ですから、まずはこのルールの緩和に業界が取り組むべきだとされている状況です。そこに入り込む形で新たな自主規制をトップメーカーが始めることに対して、「それはおかしいのではないか」と異論が出ているわけです。
保存試験を2年で打ち切り
消費期限の問題は置き去りに
もう1つ問題とされているのは、明治の説明でも歯切れが悪かったところですが、賞味期限表示の決定に際し、消費者の安全に対する質問に正面から答えていない点です。
明治はアイスクリームの保存試験を2016年から2018年まで行い、「2年で品質劣化が少ないことが確かめられた」として試験を打ち切り、前述した最大24カ月(2年間)の賞味期限を定めたそうです。しかし、そもそも「アイスはいつまで食べられるのか」という消費者からの問い合わせが多いという理由から、今回の措置が検討されたにもかかわらず、「では、3年前のアイスは食べられるの?」「それよりもっと古いアイスは安全なの?」といった消費者の質問には、はっきり答えていないのです。
これまでの流れを見ると、明治は「いつまで安全に食べられるの?」という消費期限についての消費者の心配を、「いつまでだったら風味が変わらずにおいしく食べられるの?」という賞味期限の議論にすり替えて対応した、という言い方もできます。
食品の中で、ワインは何十年も保存した瓶が残っています。数十年前のビンテージのワインは、きちんとした状態で保存していても当たり外れがあって、いざ封を開けてみたら期待していた味わいではないことがあります。そうしたことが判明するのも、保存が続けられているからこそです。