不安を煽るような言説を排除して
科学的データに基づいて整理すると…

 ちまたに氾濫する人々の不安を煽るような言説を排除し、科学的なデータに基づいて今起きている事態を冷静に把握すると、全校臨時休校という安倍首相の決断の合理性が見えてくる。

 ある感染症の専門家に聞いたところ、医学的、疫学的にみれば、12月に新型肺炎が発生した中国・湖北省武漢市は、少なくとも混乱を極めて医療体制が破綻したために死亡率が高くなったと考えられている(「新型」であったがために初動が正しかったか誤っていたかどうかは今後の検証を待たねばならないが)。

 しかし、中国では武漢以外の地域での死亡率が武漢の7分の1にとどまっており、インフルエンザの倍程度の死亡率だという(「新型肺炎 致死率、武漢だけ突出 中国、湖北省除けば0.17% インフルの倍程度」『東京新聞』2020年2月7日)。武漢で発生した新型肺炎は、少しタイムラグをもって日本に伝播したことは想像に難くない。日本も医療システムが崩壊しなければ、「武漢以外」に準じた状況になると考えるのが妥当だ。

 まさに、ここ「1~2週間が感染拡大か収束かの勝負どころ」であることが分かる。ここで感染増加の山をなだらかな山にするため、イベントなどの自粛に加えて小中高の学校での感染を抑え込めれば、感染規模は大幅に小さくなる。

 新型コロナウイルスに対して、子どもは症状が起きにくく、軽症になるとされる。だが、インフルエンザは無症候性感染者からウイルスの排出があり、感染源になり得ることが示唆される(Clin Infect Dis. 2017 Mar 15;64(6):736-742. doi: 10.1093/cid/ciw841.)。また無症状の患者から感染したとされる事例が複数報告されている(JAMA. Published online February 21, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2565)。その上、子どもは感染防御に関する知識も意識も乏しい。成人と比べても感染を広げてしまう集団となる可能性はある。感染した子どもが無症状であればなおさらだ。

 そして、「学校」は比較的トップダウンで止めやすいということもある。もちろん法的根拠がなく、安倍首相は「要請」以上の強制力を持てなかったなど、さまざまな問題はある。だが、基本的には文部科学省と自治体が通達を出せば、それに従って休校を決めてくれると考えられる。

 一方、企業ではそう簡単にはいかない。安倍首相が企業活動の停止など口にしようものなら、その日から「例外扱い」を求めて全国からありとあらゆる財界人や経営者、その他さまざまな団体役員が自民党本部にやってきて陳情し、修羅場になるだろう。

 もちろん、安倍首相の全校臨時休校の要請には拙い点も散見される。菅義偉官房長官や萩生田光一文科相との間に事前の調整がなく、今井尚哉首相補佐官の進言によって決まったとされる意思決定の不透明さや杜撰さの問題はある。だが、どこかで止めなければいけない中で小中高を臨時休校にするという選択をしたことには、十分に合理性があると評価すべきなのである。