批判もあったが、結果オーライの台湾

新型コロナで露呈した「中国人観光客依存」の危険、香港・マカオと台湾の明暗結果オーライとなった台湾のインバウンド戦略

 台湾が大陸からの訪台旅行を受け入れ始めたのは2008年だ。馬英九(国民党)政権は発足後から台中融和路線を拡大させ、大陸から200万人の観光客がやってきた。任期中の8年間で大陸客は増え続け、政権末期の2015年には418万人に倍増した。このとき、台湾にもたらされた観光消費は143億米ドル(1兆7160億円、1ドル=約120円)となった。

 ところが、2016年に「一国二制度」を拒む蔡英文(民進党)が政権の座につくと、大陸客は減少に転じた。中国政府は台湾からの団体客の渡航を制限し、また台湾も大陸からの団体客を制限するなど、政治的影響を受けたためだ。

 2018年には大陸からの訪台観光客は269万人に落ち込んだが、2019年には271万人と前年比微増となった。この年の8月、台湾は大陸から台湾への個人旅行を全面停止したが、すでに台湾は一極依存を脱し、日本や韓国、東南アジア、南アジア、オーストラリア、ニュージーランドなど観光客の取り込みを多極化させ、リスクを回避できる構造に転換を図っていた。

 過去には大陸の観光客に依存していた観光関連企業が、蔡英文政権に対し猛反発したこともあった。だが、我に返ったインバウンド事業者もある。

「結局、大陸客で潤ったのは一部の事業者のみでした。確かに帳簿上の数字は上昇しましたが、資金回収は至難で、売掛金ばかりが増えていくのです。多くの台湾の事業者は大陸の旅行社との商売を難しいと感じています」(台湾資本のホテル経営者)

 中国を中心に構築してきた産業界のサプライチェーンについても、多くの台湾製造業は2018~2019年にかけて、大陸からの移転を進めてきており、新型コロナによる影響も最小で食い止めている。その蔡英文政権への直近の支持率は68.5%、「結果として彼女は正しかった」という声が聞かれるようになった。

 日本も中国依存のリスクを目の当たりにしている。“引き潮”“満ち潮”と変動の激しさに一喜一憂させられたのが日本のインバウンドの歴史だった。目先の利益に振り回されない経営体質の再構築が、今後のインバウンドのカギを握るといえそうだ。