「行動」をうながすことが、成果につながる

――本書の中で、ご自身の仕事と重なるところや共感したエピソードなどはありましたか。

 重要な課題にフォーカスするように働きかけることは自分自身いつも意識しているので、共感できる部分でもありました。仕事をしていると、あれもこれもやりたいと、取り組むべき事柄が雑多に並んでしまい、優先順位を付けようとしても、捨てることが意外にできないんですよね。

 その点で、ビルのコーチングの様子を読みながら、こちらから指示するのではなく、対話をしながら、相手が主体となった意思決定を引き出し続けるということが非常に重要なんだなと改めて痛感しました。

 一方、相手にしてみれば、自分が主体となった意思決定をする場合に怖いのは、失敗することだったり、失敗を周囲に見られてしまうことだったりすると思うんです。でもビルは、相手の全人格に対して興味・関心を示したうえで、全幅の信頼を寄せてくれた。「失敗は最終的に成功すればそれは成功への過程でしかない」「失敗しても大丈夫」だと思わせてくれた。

 そうやって背中を押し、行動をうながしてこそ、最終的には大きな成果につながるという、その考え方に、すごく共感するものがありました。ただ、つねに自分ができているかと問われると難しいですよね。寝不足の日とか、コンディションもありますしね(笑)。

「親切なマネージャー」が成功しないワケ

マネージャーの仕事は「議論に決着をつけること」

――とくに、ここは仕事の現場で生かせそうだと思われたところはありましたか。

 1つは、「マネージャーの仕事は、議論に決着をつけることだ」というところ。もう1つは、「マネージャーは何をすべきか指図をするのではなく、なぜそれをやるべきかという物語を語れ」というところです。

 この2つは実際にマネージャーとして実行するにはとても勇気がいることです。

 ビジネスでは、明確な決定が下されないことがたくさんあって、そこに完璧な正解は存在しません。でもビルは、「まちがってもいいから、とにかく行動を起こせ」と教えていました。「決定を導くための適切なプロセスがあることは、決定そのものと同じくらい重要だ。そうしたプロセスがあれば、チームは自信を持って前進し続けることができる」と。

 議論がなかなか収束しないときは、何が会社のためになるかという明確な軸を持って、これで行くんだと方針を決める。そして絞り込んだ目標に向けて人々をグッと前に進ませるのがリーダーだと。ここは意識していきたいなと思いました。